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最近注目される週休3日制(週休4日制)
政府が働き方改革を掲げてから数年が経過しました。この間に残業時間の抑制や年次有給休暇の取得義務などが話題に上がりましたが、最近のトレンドは「週休3日制(週休4日制)」ではないでしょうか。
当社(株式会社ナレッジソサエティ)では、2017年4月から週休4日制の導入を開始しましたが、当時は週休3日制ですら珍しい人事制度でした。
しかし、2020年10月6日にみずほフィナンシャルグループが週休3日制、週休4日制の導入を検討していることを発表し、2021年3月18日にはリクルートグループが同年4月から年次有給休暇を除いた年間休日を130日から145日に増やし、週換算で週休約3日(週休2.8日)になることを発表すると、世間からの認知度や導入の実現性も高まっていったと思われます。
また、2021年4月5日には政府が本格的に希望する人が週休3日で働ける「選択的週休3日制」の導入に向けて検討を進めるという姿勢も明確に打ち出しましたので、日本社会全体に週休3日制が普及する日も近いのかもしれません。
現に、その後多くの大手企業で週休3日制を導入する動きが加速され、大手家電メーカーのパナソニックHDでは、2023年2月からの本格導入を目指し、2022年10月から希望する社員を対象に週休3日制を試験導入されました。
参考①:「選択的週休3日制」政府 導入に向け検討進める(NHK NEWSWEB)
参考②:パナソニックHD、週休3日制を導入 副業や自己学習を後押し
日本における正社員の週休3日制(週休4日制)導入の歴史
女性社員の仕事と家庭の両立をサポートする短時間勤務制度の導入
そもそも日本では働き方改革が叫ばれる以前にも早くから週休3日制や週休4日制を導入していた企業や試験的に導入している企業がありました。例えば、日本IBMでは2004年1月から短時間勤務制度が導入され、週3日勤務から週5日勤務まで、週5日勤務の場合でも労働時間をフルタイムで6割や8割にすることを選択できるようになりました。もともとは女性社員の仕事と家庭の両立をサポートすることをきっかけに生まれた制度だったようですが、約2万人の全社員が対象となり運用されているようです。
店舗スタッフの長時間拘束を逆手に取った週休3日制・週休4日制
ユニクロを展開するファーストリテイリングでは2015年10月から転勤がない地域正社員を対象に週休3日制が導入されました。この制度は来客数の多い土日や祝日での出勤を条件に、1日の勤務時間を10時間に変更することで、週あたりの労働時間や給与水準を変えずに対応するものでした。
当社ナレッジソサエティにおいても、2017年4月から週休3日制を超える週休4日制の起業家正社員®という人事制度を開始し、スタッフの起業をサポートするために運用しています。当社の制度では1か月単位の変形労働時間制を採用し、所定労働時間を月160時間、1日の労働時間を13時間20分に設定して週4日のまとまった休みを確保するものになっています。
生産性向上へ労働時間削減と賃金維持を図る週休3日制の試験導入
その他にも、2019年8月には日本マイクロソフトが金曜日を全社員共通の特別休暇とし、オフィスを閉めて週休3日制を試験的に導入するという取り組みを行いました。取組後に実施したアンケートでは週休3日制に関する従業員の満足度は9割を超えるものとなっており、週休3日制や週休4日制を導入することに伴い、従業員の満足度が向上し、企業側のブランドイメージのアップにもつながることも考えられます。
さて、近年トレンドとなっている「週休3日制(週休4日制)」ですが、日本企業では2000年代前半から徐々に導入されていることがわかっています。しかしながら、1日当たりの労働時間がどうなるのか、給与水準はどうなるのかといった部分は導入する企業によって大きな差があることから実態が見えにくいことも事実です。当社ナレッジソサエティでも週休4日制の人事制度に関しては試行錯誤しながら運用しており、他の企業も同じく試行錯誤していることが予測されます。今回当社で調査してまとめた週休3日制正社員制度を採用している企業についてさらに詳しく調査を行い、いくつかの企業をピックアップして比較を行ったうえで、正社員の週休3日制(週休4日制)の実態に迫りたいと思います。
参考①:日本IBM週休3日制で変わる働き方(エンジニアライフ応援サイトTech総研)
参考②:ユニクロのファストリ、週休3日制を導入へ(日テレNEWS24)
参考③:「週勤 4 日 & 週休 3 日」を柱とする自社実践プロジェクト「ワークライフチョイス チャレンジ 2019 夏」の 効果測定結果を公開(Microsoft)
正社員の週休3日制(週休4日制)の4つのモデル
正社員を対象とする週休3日制(週休4日制)について、1日の労働時間と週休2日制と比較した際の給与水準という2つの観点から、いくつかの企業を調査しました。マトリクスを使ってまとめると下記の4つのモデルに分類することができます。
モデルA 1日の労働時間増加・給与減少モデル
1点目は、1日の労働時間が増加し、給与が減少するモデルです。給与を基本給(ベース給)といった観点で考えれば、基本的にはこのモデルはあまり有り得ないでしょう。裁量労働制、フレックスタイム制などを導入している企業で、労働者が週休3日制になりかつよりフレキシブルに動ける見返りとして基本給を引き下げるということは想定されますが、労働時間という概念で拘束される働き方においては労働者側には大きなメリットがないため、あまり導入は検討されないと考えられます。
ただし、残業代など給与の総支給額という点から考えると、もともと1日の拘束時間が長時間化しやすい業種では、1日の所定労働時間が長くなることにより残業代も含めた給与は少なくなるため、給与が減少するという見方が強くなるでしょう。特に運送業に従事するドライバーなどではこの傾向が強くなると考えられます。
モデルB 1日の労働時間増加・給与水準維持モデル
2点目は、1日の労働時間が増加し、給与水準が維持されるモデルです。このモデルは接客業や運送業など、1日の拘束時間が長くなりがちの業種で、変形労働時間制を採用して導入するケースが目立ちます。この変形労働時間制を採用する週休3日制のケースとしてはユニクロを展開するファーストリテイリングや佐川急便で導入されています。ナレッジソサエティの週休4日制もこのモデルに分類されます。
なお、リクルートグループのケース(週休2.8日)も、1日の労働時間を7時間30分から8時間に変更しているため、変形労働時間制は採用していませんがこのモデルに含まれるでしょう。ただし、もともと1日の拘束時間が長時間化しやすい業種では残業代が支給されにくくなるという側面もあるため、実質的にはモデルAとなるケースもあるでしょう。
モデルC 1日の労働時間維持・給与減少モデル
3点目は、1日の労働時間を維持し、給与が減少するモデルです。このモデルは育児や介護などでの離職を防ぐ観点から短時間勤務を導入されたことが始まりと考えられ、今後最もスタンダードなモデルになると考えられています。
日本IBMが2004年1月から導入した短時間勤務制度における週休3日制がこのモデルに当てはまるでしょう。また、みずほフィナンシャルグループが希望者に導入するケースでも週休3日制は週休2日制の給与水準の8割、週休4日制は週休2日制の給与水準の6割となるとされています。
自由民主党の1億総活躍推進本部で検討されている「選択的週休3日制」でも、給与水準が週休2日制よりも低下することが前提で意見交換がされている感は否めません。多くの企業側が最も導入しやすいモデルである一方、1日当たり2割の給与削減を受け入れてまで週休3日制を選ぶ労働者がどれだけいるのだろうかということにも気を配らなければならないでしょう。
モデルD 1日の労働時間維持・給与水準維持モデル
4点目は、1日の労働時間を維持し、給与水準を維持するモデルです。労働者側からすると最も理想的なモデルだと思いますが、企業側は週1日分の労働時間を減少させたとしても、これまでと同様に組織が機能するのかという点を真剣に考えなければなりません。
このモデルに関しては、日本マイクロソフトが2019年8月に試験的に導入した例が挙げられます。毎週金曜日を全社員共通の特別休暇とすることで印刷枚数は3年前の同時期より5割減、電力消費量も3年前の同時期より2割減となるなど大幅なコストカットにもつながっています。ただし、結果的に本格的な導入には至っていないということは、現実的には導入が難しいモデルであることを示していると言えるでしょう。
その他のモデル
正社員を対象とする週休3日制(週休4日制)では、モデルA~Dに当てはまらないものも存在します。具体的には下記のケースがあります。
まずは、日本KFCホールディングスが2016年4月から採用している「出勤日時限定社員」という制度です。こちらでは1週間あたりの出勤時間が20時間程度とされていることから、週休3日制となる週4日勤務では1日当たり5時間程度、週休4日制となる週3日勤務では1日当たり7時間程度となり、給与水準に関しては通常の勤務と比べて減少するようです。東邦銀行では2017年より短時間勤務制度の1つの選択肢として週休3日制が提示されており、ヤマト運輸株式会社でも労働日数・時間選択制度として週休3日や週休4日が選択できるようになっています。これら3つの制度には週当たりの労働時間が減少し、給与水準も週休2日制のフルタイム勤務と比較し減少するという特徴があります。そのため、ひとまず今回はこれらの週休3日制のモデルを「モデルE 週当たりの労働時間減少・給与水準減少モデル」と仮称しておきたいと思います。
次に、株式会社クリエイティブアルファがグループ企業の株式会社シーエーセールススタッフにて導入した週休 3 日制度『気分で出勤』という制度です。これは週休2日制を採用しながら、一定以上の条件を満たせば週1日をフリー出勤とし、オフィスに出社しないでもよいという制度になります。ただし、この制度ではフリー出勤日をあくまでも出勤と扱い、電話やメールなどのやむを得ない業務は対応することがルールになっています。そのため、フリー出勤日にどれだけ仕事をするかは制度を適用される個人の裁量に委ねられる部分も大きいと考え、今回は株式会社クリエイティブアルファのモデルを「モデルF 個人裁量による労働時間増減・給与水準維持モデル」と仮称します。
参考①:「好きな曜日・時間に休んでOK」な社員 あのフードチェーンが新制度 J-CAST会社ウォッチ
参考②:東邦銀行 人事制度改訂の全体像
参考③:「週休3日制」で社員から悲鳴? 一方で支持された「気分で出勤制度」とは AERA dot.
参考④:労働日数・時間選択制度の導入について~働き方改革を推進し、より働きやすい労働環境を構築するため、従来からの短時間勤務に加え、労働日数も選択可能に~(ヤマトホールディングス)
みずほフィナンシャルグループの週休3日制(週休4日制)
みずほフィナンシャルグループ(以後、みずほFG)の週休3日制(週休4日制)はモデルCの「1日の労働時間維持・給与減少モデル」に該当すると思われます。思われると表現にとどめた理由については、実際の求人等で確認ができなかったためです。ただし、2020年10月6日に、みずほFGの坂井辰史社長が対外的なシンポジウムで12月からの導入を明言していることから、おそらく実施されていると思います。
みずほFGの広報によれば「休日を利用して自己研鑽やスキルアップにつなげてほしいと考えている。また介護や子育てなど、柔軟な働き方を進める一環でもある」とのことですが、1日休みが増えるごとに給与が2割減となることから、働き方が変わることへの期待感よりも「真の狙いは人件費削減ではないか?」というネガティブな反応も目立っています。実際にみずほFGは2018年に従業員全体の2割にあたる約1万9000人の削減を2026年度末までに削減する計画を発表していることから、ネガティブな受け止められ方をしたようです。
参考:1万9000人削減、みずほFGは「稼ぐ力」を取り戻したのか(ニュースイッチ)
佐川急便の週休3日制
佐川急便では2017年からドライバー不足を解消する目的で地域によって週休3日制での採用も進めています。1日の労働時間が10時間となる変形労働時間制を採用していることから、佐川急便の週休3日制はモデルBの「1日の労働時間増加・給与水準維持モデル」に該当します。
しかし、実際に東京営業所の求人を見てみると、月給の表記は22万円と変わりませんが、月収例では週休2日制のほうが週休3日制に比べて5万円程度多く支給される記載になっています(営業所ごとに月給や月収例の記載は異なりますが週休2日制のほうが支給が多くなっています)。これは本人の働き方とは関係なく1日の拘束時間が長時間であり、残業代も含めた総支給額は1日の所定労働時間が8時間の週休2日制に比べて少なくなることを明示しているものであり、実質的にはモデルAの「1日の労働時間増加・給与減少モデル」に該当すると考えておいても良いと思われます。
参考①:佐川急便が週休3日制を導入 ドライバー確保へ(テレ朝news)
参考②:東京都の求人情報-未経験大歓迎!佐川急便のドライバー募集-
リクルートの週休3日制(週休2.8日制)
リクルートでは2021年4月より年次有給休暇を除いた年間休日を130日から145日に増やすことが決定されています。厳密にいうと週休3日制が導入されるわけではなく、週換算した際の休日が約3日(2.8日)になるということになります。そのため、週休3日制として括ることが適切かどうかという議論もあるかと思いますが、今回は週休3日制という位置づけに組み込むことにしました。
リクルートの週休3日制(週休2.8日制)はモデルBの「1日の労働時間増加・給与水準維持モデル」に該当します。1日に7時間30分だった労働時間を8時間に変更し、年間の所定労働時間は現状を維持する形で対応するようです。また、月当たり35時間相当分の固定超過勤務手当であるグレード手当も引き続き支給されることから、大きな収入減少となるケースは少ないでしょう。ただし、もともと成果主義の要素が強い職場になるため、1日の所定労働時間が30分増加することに対しては賛否両論あることかと思います(そもそも固定超過残業手当がある時点で毎日7時間30分で仕事が終わらない職場だとは思われます)。
参考①:リクルートグループ、週休「約3日」に。4月から年間休日を145日に増加へ(YAHOO!JAPANニュース)
ナレッジソサエティの週休4日制
最後に、当社ナレッジソサエティの週休4日制です。ナレッジソサエティでは2017年4月より週休4日制の起業家正社員®という人事制度を開始しています。当社はバーチャルオフィス・シェアオフィスを運営する企業であり、起業や副業に取り組む方を支援しておりますが、「将来的に起業したい。」「チャレンジしたい夢がある。」というスタッフの夢も応援するためにこの人事制度を始めました。
ナレッジソサエティの週休4日制はモデルBの「1日の労働時間増加・給与水準維持モデル」に該当します。週休4日を実現するために、1か月単位の変形労働時間制を採用し、月の所定労働時間を160時間としています。1日の労働時間を13時間20分になります。
なお、給与水準は週休2日制で勤務する場合と変化はなく、月160時間を超える部分に関しては残業代が全額支給されます。ただし、1日の拘束時間は13時間20分とかなり長いため、実際に勤務するためにはある程度の体力が必要となります。
まとめ
日本において正社員の週休3日制(週休4日制)を採用している企業は、試験的に導入した企業も含め30社以上確認できています。しかし、それぞれの企業の導入する目的は必ずしも一致せず、制度も各企業によって様々です。今回は1日の労働時間と給与水準という2つの軸から、4つのモデルを想定し、実際に週休3日制(週休4日制)を採用している、またはこれから採用する企業の制度を比較してみました。この検証を通じて、週休3日制(週休4日制)は「1日の労働時間が増加して給与水準が維持される」か、「1日の労働時間が維持され、給与が休日の割合に応じて減額される」かの2パターンに大きく分かれることが明らかになりました。
政府与党である自由民主党の1億総活躍推進本部で検討されている「選択的週休3日制」は後者を想定しているため、一般的には給与水準が休日の割合に合わせて減額されることが当面のスタンダードになる可能性が高いでしょう。ただし、拘束時間が長時間化しやすい業種では人材不足を解消したり、人件費を抑えたりするために、前者のモデルを積極的に導入することも考えられ、今後の週休3日制(週休4日制)採用の動向から目が離せません。
さて、最後に当社ナレッジソサエティでは「将来的に起業したい。」「チャレンジしたい夢がある。」というスタッフの夢も応援するため週休4日制の起業家正社員®という人事制度を導入しています。まとまった時間を確保し、起業準備を進めたいという方に最適な求人となっています。ぜひご興味ある方はご応募ください。