今年度もそろそろ終わるので、採用・人事・労務に関する総括を行います。
さて、前年度(2021年度)はナレッジソサエティにとって「激動の1年」でした。当社を長い間支えてくれたアルバイトスタッフのリーダーが4月に退職され、彼女の退職に合わせて採用数を増加させました。しかし、スタッフの入社と退社が繰り返され、組織的に不安定な状況が続きました。
2021年度の終盤、ベテランのスタッフが相次いで退職しましたが、これをきっかけに組織の中心メンバーの入れ替えが起こり、結果的に社内の風通しを良くし、採用・人事・労務など社内全般の改革が進んでいく萌芽となりました。
2021年度の課題
2021年度の採用・人事・労務上の課題は、大きく以下の3点です。
採用時のミスマッチが一定数生じた点
2021年度前半はオペレーションの安定を図るため、採用人数を増加させる方針で採用活動を行いましたが、結果的にミスマッチでの入社を増加させてしまいました。
具体的には、①PCスキルが一定水準に満たない、②正確性を求められる事務作業に対する適性がない、③著しく協調性や倫理観に欠ける、といったケースがあり、特に③のケースでは既存のスタッフとの間にトラブルが生まれる事態も生じました。
2021年度前半の採用活動では、書類選考の後、オンラインでの簡単な会社説明と面接、現地での面接の2回のみで採用を行っていました。しかし、このフローでは選考を受ける側にも、現場で働く既存スタッフ側にも十分な情報提供が出来ていなかったため、振り返ればリアリティショックによるミスマッチが生まれるのも無理のない選考フローでした。(むしろそれまでのフローで当社に定着した方の適応力がかなり高かったといえるでしょう。)
そのため、2021年度後半からは、当社で半日程度就業してもらう職場体験を選考フローに入れ、選考を受ける側と、現場スタッフ側の双方にミスマッチが生じにくいようにしました。
職場環境悪化によって離職者数が増加した点
2021年度は、そもそも採用時のミスマッチであったケースも多かったですが、職場環境の悪さも離職者数の増加に影響を与えていたと言えます。具体的な問題点としては、①現場の指揮系統が不明瞭で誰の指示を仰げばよいのかが不明瞭であったこと、②指導経験が浅いスタッフに教育役を担わせてしまったこと、③上司に質問をしにくい環境であったことが挙げられます。
①、③に関しては私が入社した時から一部感じていたことではありましたが、2021年4月に退職したアルバイトスタッフの人柄でどうにか保たれていました。現場の大黒柱だったスタッフが抜けることによって、本質的な問題が顕在化したと言えるでしょう。
オペレーションが不安定であった点
2021年度以前から、当社の課題としてマニュアルらしいマニュアルが存在せず、曖昧な口頭伝承で業務が引き継がれる状態が続いていました。「learning box」というツールでクイズを作成する、作業する様子を撮影した動画を残す、スプレッドシートに簡単な作業工程をまとめるするなどしてその状態を補完してはいましたが、クイズの問題や動画、シートの記載事項が更新されないなど、著しく不完全な状態でした。
また、2021年度は、定期的に離職者が出て常に新人スタッフへの現場の業務の教育が必要な状態であったため、日々の定型業務を回すことに手一杯な面は否めず、オペレーションの安定しない状況が続いていました。
2022年度の目標
2021年度の課題を踏まえ、2022年度に掲げた採用・人事・労務上の目標は大きく以下の3点です。
2022年度の具体的な施策
採用・人事・労務上の目標を達成するため、大きく8つの施策を実施しました。
リファラル採用の実施
2021年度の前半に離職者が増加したことを背景に、採用担当が水面下で動いていましたが、2022年4月からキャリア採用1名、新卒1名の合計2名のスタッフが既存スタッフからの紹介で入社することになりました。
リファラル採用を実施した理由は、とにかく短期間での離職リスクが低く、一定期間安定して働いてくれる人材が必要だったからです。
目標として掲げた①採用時のミスマッチを解消すること、②職場環境の雰囲気を改善すること、③定型業務の習得速度を向上させることのいずれにもつながると考えて実施しました。
定期面談(年4回)の導入
2022年7月から3ヵ月に1回、人事担当とスタッフが個別で面談する機会を設けることにしました。
2021年度までは、何かしら社内でスタッフの行動に問題があった、あるいはスタッフから相談があった場合に、人事担当や社長が直接面談をする機会を設けていましたが、この時点で特定のスタッフ間の関係性が破綻していたり、既に退職の意向が固まっていたりと、面談を実施する効果が非常に薄い状態になっていました。そのため、定期的に面談を設定することで、一定の周期でスタッフの状況を把握したり、相談に乗ったりできるようにしました。
目標として掲げた②職場環境の雰囲気を改善することにつながると考えて実施しました。
ランチ会(月2回制)の復活
2022年7月から現場スタッフが毎月必ず1回参加するランチ会を実施しました。
新型コロナの流行前は月1回のランチ会を行っていましたが、週休X日制のスタッフなど勤務日数が少ないスタッフ同士の出勤が重ならず、毎月全スタッフが必ず参加できるイベントではありませんでした。そのため、今回は復活にあたって、基本的には休憩時間外に実施するイベントとし、スタッフの交流と社長の経営方針等を共有する会にし、月2回制として全スタッフが毎月必ず参加できるようにしました。
目標として掲げた②職場環境の雰囲気を改善することにつながると考えて実施しました。
定例ミーティングの導入
2022年4月から原則毎週定例ミーティングを実施するようにしました。
定例ミーティングでは、社長や採用・人事・労務担当、マネージャーからの伝達を共有し、1週間のうちに発生した特に重要なトラブルやクレームについての対応策や、会社としての方針を伝達したり、日々の業務の改善点を検討したりします。
目標として掲げた②職場環境の雰囲気を改善すること、③定型業務の習得速度を向上させることにつながると考えて実施しました。
ランク制度(職能による昇給制度)の導入
2022年7月から定型業務の習得状況に応じたランク制度を導入しました。
具体的には、定型業務の棚卸を行ってタスクを一覧にし、その上で業務習得率に応じて5段階のランクを導入し、年2回(9月と3月)の査定時に自己評価とマネージャー・経営層による評価を実施します。ランクが上がった場合には昇給、ランクが下がった場合には降給するしくみを制度として導入しました。
ランク制度を導入した理由は、同じ定型業務を担うスタッフの基本給がどのように設定されているか明確でないこと、また制度としての昇給の仕組みがないことが問題だと感じていたからです。できる仕事が増えるにつれ、それをレクチャーする機会などの負担が増加しますが、それによって賃金が上昇しないという状況があったため、多少なりともスタッフの間で不満の声があったことも事実です。
また、目標として掲げた②職場環境の雰囲気を改善すること、③定型業務の習得速度を向上させることにもつながると考えて導入しました。
皆勤賞与の導入
2022年度から1ヵ月間、無遅刻、無欠勤で勤務した場合、日数分のボーナスを6ヵ月に1回まとめて支給する皆勤賞与を導入しました。
皆勤賞与は、当社の事業が店舗ビジネスであることを踏まえ、遅刻や欠勤なく勤務するスタッフを評価する意味合いで導入しました。前年度までは、頻繁に当日欠勤をするスタッフに対し、皆勤で勤務しているスタッフからの不満の声があったことは事実です。会社側としても店舗ビジネスである以上、休まず出勤してくれるスタッフに対して何かしらの感謝の気持ちを伝えたという意思もあったので、皆勤賞与を導入しました。
目標として掲げた②職場環境の雰囲気を改善することにもつながるとも考えて導入しました。
マネージャー制度の導入
2022年9月からマネージャー制度を導入しました。
当面はカスタマーサービス部門の現場責任者として、サービス提供、顧客対応に関連する定型業務を効率的に回したり、業務改善を進めたりする役割を担ってもらいます。
スタッフが当社での中長期的なキャリアパスを描けるようにすること、経営層がある程度現場のオペレーションから離れることができるようにすることが導入の目的です。
なお、目標として掲げた②職場環境の雰囲気を改善すること、③定型業務の習得速度を向上させることにもつながると考えて導入しました。
マニュアル作成ツールの導入
2022年3月から「Confluence」というマニュアル作成ツールを導入しましたが、2022年度から社内の定型業務のマニュアル、定例ミーティングの議事録として正式に運用を始めました。
2021年度から現マネージャーより、感覚的に作成が可能で、写真や表などを盛り込みやすく、ウェブ上ですぐに修正ができるマニュアル作成ツールとして「Confluence」の導入が提案されており、中心メンバーの入れ替えが起こったタイミングから加速的にマニュアルの作成が進みました。
目標として掲げた②職場環境の雰囲気を改善すること、③定型業務の習得速度を向上させることにつながると考えて導入しました。
施策の効果
2022年度に実施、導入された施策の効果について、採用・人事・労務担当の視点と、現場スタッフの視点でそれぞれまとめていきます。なお、当社は社長を含め10名前後の会社であるため、担当者の主観に基づく評価や、定性的な評価が多い点はご容赦いただければと思います。
採用・人事・労務担当が感じる効果
まずは、担当者が感じる効果です。こちらは、リファラル採用の実施、ランク制度(職能による昇給制度)の導入、皆勤賞与の導入、マネージャー制度の導入に絞って整理したいと思います。なお、担当者の主観的な側面が強いですがご容赦ください。
リファラル採用の実施
リファラル採用には次のメリットがあると感じています。
①既存スタッフから仕事内容や職場の雰囲気などを事前に共有された上で入社を決断してくれているため、仕事内容や組織とのミスマッチが発生しにくいこと
②採用するスタッフの仕事観や考え方などが既存スタッフと同質である可能性が高く、教える側が仕事のレクチャーをしやすく、また教わる側も業務の習得スピードが早くなること
キャリア採用で入社した1名は、驚くほどのスピードで業務を習得し、わずか1年でランク制度の最上位のランクになりました。2023年4月からマネージャーへに就任する予定です。新卒で入社したアルバイトスタッフも、勤務状況が評価され、2023年4月より正社員に雇用形態を変更することに決まりました。このスタッフも正規の採用選考フローで入社したスタッフよりも早く定型業務を習得している実態があります。
リファラル採用の実施によって、正規の採用選考ではなかなか採用できなかった継続して安定的な就業が望めそうなフルタイム勤務のスタッフを2名雇用できたこと、職場の雰囲気にも馴染んでいる様子であること、正規の採用選考フローで入社したスタッフよりも業務の習得速度が早いことから、目標として掲げた①採用時のミスマッチを解消すること、②職場環境の雰囲気を改善すること、③定型業務の習得速度を向上させることのいずれも実現できたと考えます。
ランク制度(職能による昇給制度)の導入
現場スタッフのある時点での業務習得状況や、また一定の期間でどの程度習得業務が増加するのかといったことを数値で可視化できる点が大きなメリットです。また、入社後、ある程度の期間が経過したスタッフにとっては業務習得にあたってのモチベーションにつながっている印象を受けています。
評価基準の曖昧さが残っている点は否めませんが、業務の習得状況に応じて基本給が決定すること、またその増減でランクが変動し基本給も昇降することで、職場内における自分の給与に関してある程度の納得感を得ることが出来るようになったと感じています。そのため、目標として掲げた②職場環境の雰囲気を改善すること、③定型業務の習得速度を向上させることのいずれにも一定のプラスの効果があったと考えます。
また、ランク制度の導入にあたって、定型業務の棚卸を進め、タスクを明確にしたことで、日々の定型業務の中のコア業務も明確になっていき、業務委託や派遣スタッフの採用などもある程度計画的に検討できるようになったことも経営的にはプラスであったと考えます。
皆勤賞与の導入
皆勤賞与の支給をモチベーションに体調管理に励むスタッフがいることは想定内のプラスの効果でしたが、体調不良時に過剰に無理をするスタッフが減ったり、子どもの発熱等で過剰に申し訳なさそうに振る舞うスタッフが減ったりしたことが、想定していなかったプラスの効果でした。
皆勤者が会社から評価される前提があり、かつ明確に給与面で提示されたことによって、職場全体に休むことに対する寛容さも生まれ、良い意味で休みやすい環境が整ったことから、目標として掲げた②職場環境の雰囲気を改善することを実現できたと考えます。
マネージャー制度の導入
マネージャー制度の導入にあたって、配置すべきポストに空きがあること(担ってもらう明確な役割があること)と本人が希望することを前提に、次の昇進条件を明確にしました。
①フルタイムの正社員として勤務していること(1日8時間勤務の週休2日制)
②ランク制度の最上位の職能を有していること
ランク制度と連動させ、現場の定型業務をひと通りこなせることが必須となったことで、キャリアアップに向けて定型業務の習得速度が向上するとともに、可視化できる基準で選出されることで現場スタッフ内での納得感を得られると想定されることから、目標として掲げた②職場環境の雰囲気を改善すること、③定型業務の習得速度を向上させることを実現できたと考えます。
過去には執行役員など形式的な役職が存在していましたが、組織として明確な役割が与えられていなかったこと、そこに対して支給する報酬の基準や果たすべき責務が全体はもちろん、当人にさえうまく共有されていなかったという現状がありました。実際、社長が役職者に対して期待していることと、役職者が考えていることに大きな乖離があってうまく現場が機能せず、またこうした役職者の報酬や働き方に対する不満や疑問の声が挙がっていたことも事実でした。このような反省に立ち、マネージャーという役職を得てなんとなく働くのではなく、明確な役割や責務を常に共有していくことで、当社が抱える経営上の課題解決にも取り組んでいってもらいたいと考えています。
実際、2022年9月から正式にマネージャーに就任したスタッフは、4月から現場のまとめ役としての役割をこなしてくれており、マニュアル作成ツールの導入や、未確定だった業務のオペレーションの構築や新人スタッフの教育的フォローなど、様々な面で当社を支えてくれています。(私が今総括の記事をまとめる時間が取れているのも彼女のおかげです。)
また、2023年4月からマネージャーに就任するスタッフも、2022年4月入社ですが、あっという間に現場での信頼を勝ち取っており、非常に頼もしい存在です。(私がこの記事をまとめた後に多少深酒できるのは彼のおかげです。)
現場スタッフの声
次に、各施策に対する現場スタッフの声をまとめます。こちらは、2021年4月から2023年3月まで永続して在籍しているスタッフにお願いしたアンケートを基にまとめていますが、回答者は3名ですので定性的な観点が多いことをご容赦ください。
リファラル採用の実施
アンケート結果を原文そのままで掲載します。
「採用活動というのは非常に難しく、時間とコストがかかる。その分のリターンは賭けみたいなもので当たるか外れるかは本当にわからない。紹介というのはまず大前提の人間性のところが保証されているので安心感がある。特に、いま入社してくれているスタッフはとても優秀であったり良い方なのでよりそう思う。ただし、今後、紹介で入った人がもしもトラブルメーカーであった場合、紹介者の手前言いにくいやりにくいが起きないとも限らない。また、そうではない入社の人と同時期の採用だった場合、その人が・・・あの人は紹介で入ったから。。。特別扱い?と感じることがなければいいと思う。」
「紹介で既に上司との関係値ができているという点においては、会社側のメリットはかなり大きいのでマネジメント目線で見るとポジティブな印象だが、従業員側の視点を考えると、部下⇒上司、上司⇒部下の相互の関係でのフラットな評価が難しくなりがちな点はあるのかなと思っています。(実際に前の会社でもありました) 」
「あまり携わってはいませんでしたが、悪い人ではなさそうな事と一緒に働いていけそうな方だなと思った為です。」
今回紹介で入社したスタッフに対しては歓迎されている一方で、制度として定着することで想定される課題も挙げてもらえました。こうした意見をもとにリファラル採用のあり方は常に検討していきたいと思います。
定期面談(年4回)の導入
アンケート結果を原文そのままで掲載します。
「定期面談については、普段言いずらい重い悩みや相談を個別で話せるのでとても良いと思います。」
単一選択形式の回答では3名とも「役に立っていると思う」でしたが、後述するランチ会や定例ミーティングと比較した場合、自由記述のコメントが少なかった点が気になりました。定期面談が形骸化しないよう、一定の周期でスタッフの状況を把握し、相談に乗るという目的を達成できるよう、中身の改良は続けていきたいと思います。
ランチ会(月2回制)の復活
アンケート結果を原文そのままで掲載します。
「普段から些細なことも言える職場であると思っているが、シフトや時間の関係で話せる機会はバラバラなため、ランチ会は貴重だと思っている。」
「ランチ会の時に、社長からの話をみんなが聞く時間は大切だと思う。」
「ランチ会については、社内の方々とコミュニケーションが取れるいい機会なのでとても良いと思います。個人的にはランチ会後一人で休憩する時間も欲しいです。」
勤務時間の関係で接触が少ないスタッフとコミュニケーションが図れるメリットと、社長からの話を聞ける機会に対するプラスの評価の声が挙がりました。なお、原則ランチ会とは別に休憩時間を確保するように運用していますが、当日の業務量によってはランチ会が休憩扱いとなる場合も出てきてしまうので、ある程度1日の業務量に余裕を持った人員配置が改めて必要だと感じました。
定例ミーティングの導入
アンケート結果を原文そのままで掲載します。
「定例ミーティングは直近の会社の動きや方針を知る機会であり、起きたトラブル等の業務改善の場でもある。全員で同時に考えることで、その業務に多く携わっているかどうかによってもやりやすさの感覚は違うので、その場で話し合えるのはとても有意義だと思っている。」
「定例ミーティングについて、新人でも業務改善案を言える機会があるのでとても良いと思います。」
全員で同時に考えることや、新人でも改善の提案機会があるという点が評価されています。全員が当事者を持てる機会を確保することは重要だと改めて感じています。
ランク制度(職能による昇給制度)の導入
「2022年度から導入したランク制度は、できる仕事を増やすモチベーションになっていますか?」に対する単一選択形式の回答では、「モチベーションになっている」、「どちらかといえばモチベーションになっている」、「どちらともいえない」と評価はバラバラでした。
当社で就業するモチベーションが報酬以外のところにあるスタッフも多いという点、またランク制度がまだ文化として定着していない点などが要因としてあると思います。評価をすることを複雑にして無駄なコストを生まないことに注意しつつも、少なくとも評価制度でモチベーションを低下させるスタッフが出てこないことに配慮しながら、まずは運用面を工夫していきたいと思います。
皆勤賞与の導入
「2022年度から導入している皆勤賞与は、出勤することに対するモチベーションになっていますか?」に対する単一選択形式の回答では、「モチベーションになっている」、「どちらかというとモチベーションになっている」という評価でした。
また、「皆勤賞与の導入によって、良い意味でお休みしやすい環境になっていると思いますか?」に対する単一選択形式の回答では、「皆勤賞与の導入でよい意味で休みやすくなったと思う」、「あまり変わらない」という評価でした。
当社に定着してくれるスタッフは、良い意味で真面目な方、自分に厳しい方が多い印象です。こうしたスタッフに対し、少しでも無理しすぎないでもらえるような制度運用になるとともに、体調管理に励んでいることを評価する会社でありたいと思います。
マネージャー制度の導入
アンケート結果を原文そのままで掲載します。
「やはり仕事をする上で自分の成果や能力を正しく評価されることはモチベーションになるだろうし、責任という面でもあるとないでは大きく違うと思う。また、今後、例えば転職等をする場合にも実績となる。」
「純粋に、今までは特にマネージャーポストも無かったので、キャリア形成のモデルがなかったのであるのとないのじゃ大きく違うと思います。ただ、非マネージャー職の目線に立つと、現在の会社の人数・事業の規模において今後多層化していくことができるのか、自分にポストはあるのか(そもそも自分で作るのか、どうキャリア形成していけばいいのか)という疑問点は残ると思います。特に、若ければ。」
「今までは年功序列で歴が長い人が社内の上長という形だったかと思いますが、マネージャー制度の導入によりどなたに決定を貰えばよいのか、指示を仰げば良いのか明確になった為です。また、上を目指すモチベーションも上がるのではないかと思います。」
マネージャー制度の導入は、キャリア形成のモデルがひとまずできた点、現場で誰の決裁を仰げばよいのかが明確になった点で評価されているようです。
マニュアル作成ツールの導入
マニュアル作成ツールの導入そのものに対する設問は設置しませんでしたが、「2022年度は、2021年度と比較して「あなた自身」が働きやすい職場になったと思いますか?思いませんか?」、「2022年度は、2021年度と比較して「新人スタッフ」が働きやすい職場になったと思いますか?思いませんか?」という設問への回答に関する自由記述から該当する部分を抜き出しました。
「平日を回している人数が以前より多くなり、誰かしらに質問できる状態があるので(2022年度は2021年度と比べて働きやすい職場になった)。コンフルで予習復習ができるようになった。」
「先輩方が丁寧に教えれくれるとともにコンフルが出来たことにより、新人さんにとって確認がしやすいようになったからではないかと思います。」
「自分自身が入社した時は口承のような形でその時その時の対処にて教わっていたので曖昧で流動的な部分が否めなかったが、今はマニュアルなどが整備され最初からルールが明確で共通認識として業務が覚えられるのでとてもやりやすくなっていると思う。」
自由回答の中に「コンフル」(「Confluence」の当社での略称)、「マニュアル」という言葉が登場することは、それだけ効果を実感できているということだと思います。今後はマニュアルの業務カバー率を上げること、更新頻度を高めることに力を入れていきたいと思います。
2022年度の成果
2022年度は採用・人事・労務上の目標として、①採用時のミスマッチを解消すること、②職場環境の雰囲気を改善すること、③定型業務の習得速度を向上させることを掲げ、大きく8つの具体的な施策を実施しました。ここでは、2022年度の成果をまとめます。
離職者数の減少(ミスマッチによる離職者ゼロ)
2021年度と2022年度を比較して大きく改善したのが離職者数です。
2021年度は9名が退職し、そのうちミスマッチや職場への不満などで離職した人は少なくとも7名(8名)でした。2021年の冒頭に惜しまれつつ退職したアルバイトのリーダー以外は、正直あまりお互いにとって良い退職とは言えなかったと思います。
2022年度は3名が退職しましたが、家族の介護やご自身の体調不良が絡み合ってやむなく退職された方が1名、週休X日制として自分のビジネスに力を注ぐために卒業する方が2名と、いわゆるミスマッチによる離職はゼロでした。
現場のマネージャーを中心に、比較的歴が長いスタッフがこれまで感じた嫌な職場の雰囲気を変えるために一生懸命動いてくれたことの成果だと思います。
職場の雰囲気の改善
「2022年度は、2021年度と比較して「あなた自身」が働きやすい職場になったと思いますか?思いませんか?」、「2022年度は、2021年度と比較して「新人スタッフ」が働きやすい職場になったと思いますか?思いませんか?」に対する単一選択形式の回答では、全員が「働きやすい職場になったと思う」という評価でした。また、設問への回答に関する自由記述から該当する部分を抜き出しました。
「質問や確認をしやすい環境になっていると思う。」
「後は雰囲気だと思います。現場でたまに笑い声が上がるので、新人さんも馴染みやすいのではないかと思いました。」
「平日を回している人数が以前より多くなり、誰かしらに質問できる状態があるので。ウィークリー転送になったことで他スタッフと顔を合わせる&一緒に業務する機会が多くなった。などです。」
私個人としても印象的な出来事があります。2022年7月の定期面談で、あるスタッフから「良い意味でノビノビ仕事ができています」という話がありました。長い期間リモートワークが続いており、あまり現場の様子を見ることがありませんでしたが、久しぶりにそのスタッフの晴れやかな表情を見た時、これまでたまに会う時に曇っていた表情の裏側にはいろいろなことがあったのだなと深く反省しました。
教育する側のスキルが不足していることで、指導ではなく感情的な叱責をしてしまう先輩がいたために後輩のスタッフに迷惑をかける場面もありましたが、こうした嫌なことを乗り越えて前向きに仕事に向き合ってくれている姿を見るとより良い職場にしようという気持ちが湧いてきます。
定型業務の習得速度の加速
スタッフによる個人差は多少ありますが、定型業務の習得速度も全体的には上がっているように感じます。その背景には、「Confluence」によるマニュアルの整備が進んだこと、ランク制度の導入によって昇給が可能になったことがあると思います。
特にフルタイム勤務であっても、1年間で定型業務の8割以上を習得することは昨年度まででは想定できなかったので、マニュアルの整備で仕事を覚えやすくなったこと、手軽に確認しやすくなったこと、また習得率の向上が給与と連動するようになったことの成果と言えるでしょう。
ただし、習得速度には個人差があり、思うように習得が進まなかったケースもあります。業務習得に関しては、個人の要因と環境要因があると思いますので、個人の要因は自分自身で解決してもらうとして、組織として、制度として改善できる点は次年度に力を入れていきたいと思います。
オペレーションの安定
職場の雰囲気の改善が離職者数の減少につながり、スタッフが定着することで定型業務の習得速度の加速につながった面があります。この好循環は、オペレーション全体の安定に大きく寄与したといえます。特にスタッフが定着することで、定型業務の棚卸が進み、業務の垂直的な引継(経営層が担っていた業務をマネージャー層に、マネージャー層が担当する業務を現場スタッフにというイメージ)も加速したと思います。
正直なところ何をもって「オペレーションの安定」と定義するのかは難しいですが、以下の3点を踏まえると、オペレーションが前年度と比較して安定したと言えるかと思います。
①経営層が担う定型業務が減少
2021年度までは月初月末の定型業務、郵便の定期転送の管理等を経営層が担っていましたが、2022年度の6月頃から徐々に担当業務の引き継ぎが進み、11月には完全に担当から離れることが出来ました。
②経営層を含む特定のスタッフのシフト変更が減少
2021年度までは日々の定型業務の中でも一部のスタッフしか担えない業務も多く、スタッフの欠勤等に対応する形で、経営層を含む特定のスタッフにシフト変更をお願いするケースが相当数生じていました。しかし、今年度はある程度余裕を持った人員配置が出来たこと、業務の引き継ぎが進んだこと、習得率が向上したこともあって、シフト確定後のシフト変更は大幅に減りました。
③スタッフ全体の残業時間数の減少
①・②のしわ寄せが現場のスタッフにあった場合、現場スタッフの残業時間数が増加するかと思いますが、現場スタッフの残業時間数は2022年4月当初と比較して減少傾向にあります(詳細は後述する「マネージャー職以上の残業時間の抑制」を参照)。
また、マネージャー職以上を含んだスタッフ全体の残業時間数の減少幅は小さいですが、これは定型業務に従事する時間が増加したというよりは、業務改善やサービス変更にあたっての準備作業等、非定型業務の増加によるものです。
これらを踏まえると、定型業務のオペレーションがある程度安定したことで、それ以外の業務に時間を避けているともいえるでしょう。
2022年度の課題
2022年度の採用・人事・労務上の課題は、大きく以下の3点です。
採用応募者数が減少した点
2022年度は前半にリファラル採用や既存スタッフの雇用形態変更(時短正社員からフルタイムの正社員登用など)があったこと、7月頃までに通常の採用選考フローでも2名採用できたことから、一度採用活動を落ち着かせていました。(良い人材であれば採用するつもりでした。)
退職者が出ることに伴い2023年度の配置等も検討し、2022年12月から採用選考を再開させましたが、大幅に応募者数が減少しました。
環境要因としては、企業全体で賃上げが進んだこと、時短勤務や週休3日制など当社が採用の強みとしている働き方が社会全体で広がり始めていることなどがあると思います。また、店舗ビジネスゆえに出社が前提となる働き方も事務職では敬遠される要因である可能性も高いと思います。
いずれにしても、当社がターゲットとする起業をするために週休3日、週休4日で働きたい層、子育てや介護などと両立するために時短で働きたい層に魅力的に感じてもらえる職場環境を用意する必要があるかと思います。
評価基準が曖昧な点
2022年度はランク制度を導入することで評価制度そのものを導入できましたが、運用面に課題があると思います。具体的には評価基準に曖昧さが残る点です。査定時の評価では定型業務について「習得した」、「習得していない」の2軸で自己評価、マネージャー評価、経営層による評価を行います。しかし、評価する側とされる側で習得に対する感覚の差が大きいと、納得感を醸成することが難しくなってしまう可能性があり、評価制度に対するネガティブな印象を持たれてしまうリスクもあります。
当社のスタッフの傾向を見ていると、「自己評価<他者評価(自分でできると思っているよりも周囲からの評価が高い)」のスタッフが成功し、「自己評価>他者評価(自分でできると思っているよりも周囲からの評価は低い)」のスタッフが定着せずに辞めていく傾向があります。これは必然なのかもしれませんが、評価基準を擦り合わせる作業をしてこなかった問題であるともいえるので(そもそもこれまでは評価制度そのものがなかったが)、評価に納得感を生む努力も必要かと思います。
マネージャー職以上の残業時間が長い点
職場全体としては月間の残業時間を4月当初と比較して大幅に減少させることができましたが、マネージャー職以上の残業時間が現場スタッフと比較して長いことは課題です。もちろん残業代も支給され、責任に応じた手当も支給されており、他のスタッフよりは経済的な面での手当はあります。ただし、残業時間の硬直化は健康面での悪影響は否めないため(マネージャー職以上の残業はやむを得ぬ残業というよりは自発的な残業が多いが)、職場としても可能な限り抑制していきたいと思います。
現場スタッフの月間残業時間(平均) ※マネージャー職以上を除く |
全スタッフの月間残業時間(平均) ※マネージャー職以上を含む |
|
4月 | 6時間14分 | ー |
5月 | 4時間51分 | ー |
6月 | 4時間10分 | ー |
7月 | 2時間11分 | ー |
8月 | 1時間37分 | ー |
9月 | 2時間10分 | 5時間15分 |
10月 | 3時間28分 | 4時間44分 |
11月 | 3時間00分 | 4時間18分 |
12月 | 2時間35分 | 2時間18分 |
1月 | 3時間13分 | 4時間52分 |
2月 | 3時間45分 | 3時間56分 |
3月 | 3時間11分 | 4時間05分 |
2023年度の目標
2022年度の課題を踏まえ、2023年度は採用・人事・労務上の目標として次の3点を掲げます。
定型業務の効率化・単純化を進め、外注化も進めること
2022年度は定型業務の棚卸がある程度進みましたが、2023年度はさらに必要で残さなければならない定型業務の効率化と単純化を進めていきたいと思います。効率化と単純化が進むことで、業務そのものの外注(派遣も含む)もしやすくなり、社内のオペレーションがさらに安定すると考えます。また、直接雇用するスタッフに、よりやりがいのある仕事をしてもらうことにもつながるので、採用活動にもプラスの効果があると思います。
会社評価と自己評価との乖離を埋めること
2022年度の課題として、評価基準が曖昧な点を挙げました。できれば採用前に、遅くとも入社時の早い段階から会社と新人スタッフの評価基準の乖離は埋めておきたいと考えます。2022年度は査定時に習得の有無に関する2軸の評価を行いましたが、2023年度は新人スタッフは査定とは別により細かい評価を行っていきたいと思います。
当社が考える「働きやすい職場」を実現すること
「採用応募者数の減少した点」、「マネージャー職以上の残業時間が長い点」を2022年度の課題として挙げました。解決にあたっては、まず当社で働くスタッフが「働きやすい職場」と感じることを徹底的にヒアリングし、可能な限りの施策を実施していきたいと思います。当社の既存スタッフが働きやすい環境を徹底的に追求していくことで、既に活躍する既存のスタッフと同じようなマインド、同じような環境の方からの応募が増えるのではないかと考えており、リファラル採用と同様の効果があると考えます。
2023年度に実施予定の施策
2023年度の採用・人事・労務上の目標を達成するため、現時点では次の4つの施策を実施します。
社内システムの改修
まずは、定型業務の効率化・単純化を進めるために、社内システムの改修に取り組みます。
現時点では、システム上の不備や機能の不足を人力で補っている部分が大きく、それゆえに現場スタッフにある程度の能力が求められ、また教育コストが発生している状態です。
システム改修によって定型業務の効率化・単純化が進むと、現場で働くスタッフに求められる能力を一定水準よりも抑えることができ、教育コストも減少させることができます。その結果、コア業務を除く定型業務の外注化(派遣も含む)も進めることができるかと思います。
「新人教育60日計画」の運用
2023年度は、より計画的な新人教育を実施することに力を入れます。
具体的には「新人教育60日計画」を策定し、60勤務日までに確実に習得してもらう定型業務を明確にし、新人スタッフの業務の習得状況を随時可視化する新人教育シートを導入します。
新人スタッフは自己評価(4段階で評価)を随時入力し、教育担当も月に2回程度そのシートの担当者評価(4段階で評価)を入力するように運用することで、業務の習得状況を可視化し、また自己評価と他者評価の乖離を早期に埋めていきたいと思います。自分自身で自身の現在地が把握でき、入社当初から当社基準の「仕事ができる」という感覚を持ってもらうことで、いち早く戦力化してもらうことにつなげたいと考えています。
2023年度からは派遣スタッフの活用、2024年度からは高卒新卒の採用を計画しているため、より一層に評価を可視化すること、評価基準の曖昧さを回避することは重要だと言えるでしょう。なお、60勤務日にしている理由としては、週5日勤務で約3ヵ月、週3日勤務(週休4日制)で約5ヵ月となり、契約期間や試用期間の見極めとして位置付けている意味合いもあります。
5連休(7連休)以上の休暇取得の実現
全スタッフが年末年始休暇を除いて1回以上、5連休(最大7連休)の大型連休を取得できるようにします。
当社は社長を含め従業員が10名程度の規模の中小企業であること、店舗を運営する業態であること、祝祭日を除いて土日も営業日であることなどから、なかなか大型連休を取得するのが難しい現状があります。特に週5日勤務(フルタイムに関わらず)で働くスタッフはより難しいのが実情です。
そのため、2023年度は「全スタッフが年末年始休暇を除いて1回以上、5連休(最大7連休)の大型連休を取得できるようにする」という明確に目標を掲げ、年度当初にスタッフ間で調整を図りながら、全スタッフが5連休(最大7連休)を取得できるに計画的に進めていきたいと思います。なお、マネージャー層以上が連休を取得するためには、抱える業務の定型化、現場スタッフへの引き継ぎを進める必要もありますので、ここにも力を入れてかなければなりません。
子育て等による当日の在宅勤務切替制度の導入
ランク制度で一定のランク以上であることを条件に、子育てや介護等、自分自身ではコントロールできない要因で出社が難しくなった場合、当日でも在宅勤務に切り替えることができる制度を導入します。これは子育てをする主婦層からの要望があったので制度化したいと思っています。
当社は前提として店舗を運営する業態であり、会員宛の郵便物を当日中に処理をするということが日々の最低限のタスクとなるため、全スタッフがリモートワークをすることは難しいです。人員配置的にも現時点ではさほど余裕はないため、当日頻繁に在宅勤務に切り替えるようなことを全スタッフに保障することは難しいです。ただし、在宅であれば当日稼働できるスタッフに休んでもらうことは経営上もマイナスであること、子育てや介護など自分自身でコントロールできないこと(例えば、子どもの発熱で保育園には預けられず自宅で看病しているが、子どもの容態が良くなり自分自身も問題なく稼働できる状態)で働けるのに働けないことによってモチベーションが低下してしまうことは避けたいことなどから、ランク制度で一定のランク以上であれば当日の在宅勤務への切替を可能にしたいと思います。むしろ、在宅に切り替えてでも働きたいと言ってもらえることはとてもうれしいことです。
まとめ
2021年度の反省を踏まえ、2022年度は採用・人事・労務に関する部分で様々な取り組みを行いました。現場で働くスタッフの肌感として、前年度よりも良い職場になったと感じていることは何よりもうれしい限りです。
さて、2023年度も掲げた目標の達成に向け、まずは目の前のことに真摯に取り組んでいきたいと思います。