商品開発やマーケティング戦略の立案を行う際は、4C分析のフレームワークの活用がおすすめです。
4C分析の活用によって顧客目線で事業分析ができ、競合他社との差別化や付加価値の発見が可能となります。
本記事では、4C分析の各要素や目的・メリット、4P分析・3C分析との違いなどを解説しています。
4C分析を効果的に進めるためのポイントや活用例も紹介しているため、ぜひ参考にしてください。
目次
4C分析のフレームワークとは
4C分析とは、1993年にロバート・ロータボーンによって提唱されたフレームワークです。
最大の特徴は「顧客視点で事業分析を行う」点であり、具体的には以下の4つの要素に着目します。
・Customer Value(顧客にとっての価値)
・Cost to the Customer(顧客の負担)
・Convenience(顧客にとっての購買利便性)
・Communication(顧客へのコミュニケーション)
なお、「Customer Value(顧客にとっての価値)」については「Customer Solution(顧客の課題の解決)」という考え方もある点に留意してください。
マーケティング戦略の立案において4Cに着目すると、顧客の問題・課題の解決や利便性の向上を実現できる商品・サービス開発のヒントを得られます。
その結果、競合他社との差別化要因や付加価値を発見でき、優位性を持って事業を運営できる要因となります。
4C分析の4つの要素
4C分析では、顧客視点で以下の4つの要素を分析します。
・Customer Value(顧客にとっての価値)
・Cost to the Customer(顧客の負担)
・Convenience(顧客にとっての購買利便性)
・Communication(顧客へのコミュニケーション)
ここでは、各要素の具体的な内容を解説します。
Customer Value(顧客にとっての価値)
4C分析におけるCustomer Valueとは、商品やサービスの購入によって顧客が得られる価値を指します。
例えば、飲食店で食事をした顧客は、以下のような価値を得られると考えられます。
・食事そのもの
・写真映えする盛り付け
・丁寧な接客
・高級感のある空間
・話題のお店で食事ができた高揚感 など
飲食店なので当然「食事」が最も考えられる価値ですが、店舗のコンセプトやターゲットによっては、空間や丁寧な接客を求めてお店に訪れる方もいるでしょう。
顧客が商品やサービスを購入した後にどのような価値体験を得られるかを、客観的かつ多面的な視点で考えることが大切です。
Cost to the Customer(顧客の負担)
4C分析におけるCost to the Customerとは、顧客の商品・サービスの利用によって生じる全ての負担を指します。
代表的な負担としては「金銭的な負担」が挙げられますが、商品・サービスの内容によって以下のようなものも発生します。
・お店に行くまでの労力や時間
・商品が届くまでの時間
・契約手続きによる労力
・商品を検討する際の心理的負担
・設備の導入にかかる手間 など
顧客は得られる価値と、自身の負担を天秤にかけて納得できる場合にのみ商品・サービスの購入を行います。
当然顧客の負担が大きければ商品・サービスの購入はされず、顧客の負担が少なすぎる場合も利益の最大化はできません。
そのため「価値が負担に見合っているか」を踏まえて価格の設定を行う必要があります。
また顧客の労力や心理的負担、時間といった不安を減らすことで、価格の負担を上げるといった戦略も取れるでしょう。
Convenience(顧客にとっての購買利便性)
4C分析におけるConvenienceとは、商品・サービスを購入する際の利便性を指します。
具体的には以下のような要素です。
・成約プロセスの複雑さ
・商品やサービスの販売方法
・購入時のカスタマーサポート
・ECサイトの決済方法
・ECサイトの商品の見つけやすさ など
購買利便性については顧客層によっても異なります。
例えばインターネットに慣れている若年層をターゲットにする場合は、ECサイトでの販売によって購入時に生じる労力を最小限に抑えられます。
一方で、インターネットに疎い高齢者などをターゲットにする場合は、店頭販売や電話受付といった方法が有力となるでしょう。
顧客にとっての購買利便性が低いと成約に辿りつかない可能性や、リピーターにならない可能性、購買利便性の高い似たサービスの採用といった事態に繋がる恐れがあります。
Communication(顧客へのコミュニケーション)
4C分析におけるCommunicationとは、顧客と事業者間のコミュニケーション全般を指します。
具体的には以下のような要素です。
・カスタマーセンターの対応
・問合せ用の電話番号やメールアドレスの有無
・チャットボットの導入
・SNSの運用
・イベントの開催 など
顧客とのコミュニケーションは、既存顧客との信頼関係の構築に繋がり、リピーターを得られる要因となります。
また、新規顧客の獲得においても非常に重要であり、不明点を解決してあげることで安心して商品を購入できるようになるでしょう。
ほかにも、SNSでの情報発信や顧客との交流によってイメージアップにも繋がり、商品を比較検討する際のアドバンテージともなり得ます。
4C分析と4P分析との違い
4C分析と似た要素として「4P分析」があります。
4P分析とは、基本的に4C分析と同じ内容を分析しますが、顧客視点ではなく「企業視点」で実施する点が特徴です。
アメリカのマーケティング学者であるジェローム・マッカシーが1960年に「ベーシック・マーケティング」という書籍で提唱したフレームワークです。
具体的には、以下の4項目を分析します。
・Product(製品)
・Price(価格)
・Place(流通)
・Promotion(プロモーション)
4C分析と4P分析を時系列で考えると、4P分析の方が30年以上先に提唱されています。
従来は企業の理念や技術力を商品開発の基盤とした「プロダクトアウト」の手法が主流であったため、4P分析が重宝されていました。
しかし、徐々に顧客の需要を基盤として「マーケットイン」の考え方が主流となってきたため、顧客主体で考える必要が出てきたのです。
加えて、IT技術の発展によって顧客は簡単に商品やサービスの情報を手に入れられるようになりました。
これまでとは異なり、現在は顧客が能動的に情報を集めて商品・サービスを比較検討するため、より顧客視点の分析ができる4C分析が活用されているのです。
4C分析と4P分析を組み合わせた活用もおすすめ
4C分析が登場したからといって、4P分析が一切不要になったわけではありません。
4C分析と4P分析を組み合わせて分析を行う「マーケティングミックス」の活用も重要視されています。
4C分析と4P分析は対になっているフレームワークです。
Customer Value(顧客にとっての価値)⇔Product(製品)
Cost to the Customer(顧客の負担)⇔Price(価格)
Convenience(顧客にとっての購買利便性)⇔Place(流通)
Communication(顧客へのコミュニケーション)⇔Promotion(プロモーション)
それぞれを分析することで、より多面的な視点でマーケティング戦略の立案が可能となります。
4C分析と3C分析との違い
4C分析と3C分析は非常に似た名前ですが、分析の対象は大きく異なります。
3C分析では、以下の3つのCを分析します。
・Customer(市場・顧客)
・Competitor(競合)
・Company(自社)
3C分析の活用によって、自社製品の強み・弱みや外部環境を客観的に理解可能です。
その結果、事業の重要成功要因(KFS)の発見ができ、自社の優位性を活かした事業運営に繋がります。
3C分析については、以下の記事で詳細に紹介しているため、ぜひご覧ください。
4C分析の目的・メリット
4C分析を用いることで、より効果的なマーケティング戦略を立案できるようになります。
ここでは、4C分析の目的・メリットを解説します。
競合他社との差別化要因の発見
4C分析によって競合他社との差別化要因を発見できます。
Customer Value(顧客にとっての価値)の分析によって、顧客がサービスや商品に求めていることが明確になります。
その中で、競合他社が提供できていない要因を自社で取り入れられれば、差別化に繋がります。
また、Customer Valueだけでなく、Cost to the Customer(顧客の負担)の分析によって「競合他社より負担が少ないサービスを提供」、Convenience(顧客にとっての購買利便性)の分析によって「競合他社よりも快適にサービスの利用を始められる」といった差別化も可能です。
差別化要因を発見できれば価格競争に巻き込まれず、自社サービスのファンが増える要因ともなるため、結果として業績の安定化・向上に繋がります。
差別化戦略については以下の記事でも詳細に解説しています。
市場内での競争が有利に進む要因になるため、ぜひご覧ください。
顧客の需要に即した商品・サービスの開発
4C分析は顧客目線で事業を分析するため、顧客の需要にマッチした商品やサービスの開発に役立ちます。
商品・サービスの内容は当然ですが、顧客の負担や購買利便性、カスタマーサービスの観点からもカスタマーファーストな商品・サービス作りが可能となります。
顧客の需要に即した商品・サービスを提供できれば、自ら商品の比較・検討を行う顧客が自社商品を選択しやすくなり、リピーターの増加も期待できるでしょう。
一方で、顧客の需要を鑑みない「プロダクトアウト」の方針だと、どんなに性能の高い商品やサービスを開発しても顧客の獲得に繋がらない可能性があるため注意が必要です。
付加価値の検討
4C分析を行うことで、商品・サービスの付加価値の検討が可能です。
例えばCustomer Value(顧客にとっての価値)の分析を行うと、以下のような気付きが生まれる場合があります。
・顧客は自社が想定していなかった価値を求めている
・主な商品やサービスの購入によって別の価値が生まれる
このような気付きから商品・サービスの改良を行え、新たな価値を付与できます。
結果として競合他社との差別化に繋がるでしょう。
4C分析を効果的に進めるためのポイント
4C分析は顧客目線で事業を分析できる有効なフレームワークですが、やり方を間違うと思うような結果を得られない原因となります。
ここでは、4C分析を効果的に進めるためのポイントを解説します。
ターゲットを明確にする
4C分析を行う際は、自社商品・サービスのターゲットを明確化することが大切です。
ターゲットが曖昧だと、顧客にとっての価値や負担、利便性が高いと感じるポイントがズレる可能性があるためです。
その結果、顧客の需要からズレた商品開発やマーケティング戦略となる可能性があります。
ターゲットを明確にする際は、以下のような項目を詳細に決める「ペルソナ設定」の手法がおすすめです。
・性別
・年齢
・職業
・年収
・趣味
・家族構成
・現在の悩み など
ペルソナを詳細に決めることでターゲット像が明確になり、より顧客のニーズにマッチした商品やマーケティング戦略の立案が可能となります。
企業目線で分析しない
4C分析は企業目線ではなく、必ず顧客目線で行う必要があります。
企業が提供したい価値と顧客が求めている価値が必ずしも一致しているとは限らず、本当に顧客が求めているものが分からなくなる可能性があるためです。
企業目線の分析を行う場合は、4P分析を活用することとなります。
自社の強み・優位性を明確にする
4C分析を行う際は、自社の強みや優位性を明確にしましょう。
顧客が求めている価値を理解した際に、自社の強みや優位性を把握していれば「具体的かつ現実的な差別化要因・マーケティング戦略」を判断できるためです。
反対に、自社の強みが曖昧な場合、顧客が求める価値を把握しても具体的な商品開発やマーケティング戦略に反映できないため注意が必要です。
各要素の整合性を保つ
4C分析の各要素には、それぞれ関係性があります。
そのため、4つの要素の整合性が保たれているかを意識して分析を進めてください。
例えば「購買利便性が高いと顧客の負担が減少する」に繋がる場合があります。
他にも顧客の負担が少なくても、そもそも価値がない商品であれば成約には繋がりません。
4C分析の各項目で矛盾が生じている場合は、商品内容の重大な欠点や、分析内容に誤りが生じている可能性があります。
「各要素に矛盾がなくバランスが取れているか」を確認してください。
4C分析の例│eBay(イーベイ)の4C・4P分析
4C と4Pを効果的に活用したマーケティングの事例を、世界最大級のオークションサイトとして知られる「eBay(イーベイ)」を参考に見てみます。
オンラインで買い物ができるeBayの初期のターゲットは、多忙なビジネスマンで、時間節約のためにネットでの買い物を好む人でした。
Customer Value(Product)
eBay(イーベイ)のCustomer Valueのひとつとして「豊富な品揃えの中から商品を購入できるサービス」が挙げられます。
競合のAmazonは当時書籍中心の品揃えであったため、ここで差別化を図ることに成功しています。
Customer Cost(Price)
eBay(イーベイ)のCustomer Costに着目すると、バイヤーが値引き交渉できるシステム、適正な価格を表示できるシステムの導入がポイントです。
価格の面でユーザーが他のECサイトに流出することを防止しています。
また、パソコンひとつで出店できるため、出店に係るコストや手間も軽減されています。
Convenience(Place)
eBay(イーベイ)のConvenienceは、オンラインで利用ができ、好きな時間・場所で買い物できる点がポイントとなっています。
また、オンライン決済サービスの「PayPal(ペイパル)」を採用したことで決済も簡略化されました。
さらに、eBayはSEO対策にも力を入れているため、ユーザーが欲しい商品を検索した際にeBayのサイトが検索上位に表示されやすいです。
eBayで買い物をしたいと考えるユーザーが簡単に欲しい商品を見つけられるようになっています。
Communication(Promotion)
eBay(イーベイ)のCommunicationのポイントは、ユーザーがお互いに助け合えるコミュニティサイトにより、疑問を簡単に解決できる点です。
eBayについてユーザーが疑問を検索すると、Googleでは1ページ目にその疑問についてのコミュニティサイトが表示されるため、ユーザーは容易に問題を解決できます。
また、リテーラー(売る側)とバイヤー(買う側)向けのブログを充実させ、売り方のコツを伝えたり、成功したユーザーの例を紹介したりもしています。
起業で使えるその他のフレームワーク
事業分析を行う際は、複数のフレームワークを組み合わせることで、さらに効果的なマーケティング戦略の立案が可能となります。
ここでは、起業で使えるその他のフレームワークを紹介します。
PEST分析
PEST分析とは、マクロ環境による事業への影響を分析できるフレームワークです。
具体的には、以下の4つの項目を分析します。
・Politics(政治的要因)
・Economy(経済的要因)
・Society(社会的要因)
・Technology(技術的要因)
PEST分析の活用により、業界や市場の将来を予測でき、中・長期的な経営戦略の方向性を明確化できます。
特にマクロ環境は事業者が統制できる要因ではなく、ビジネスに与える影響も大きいため、経営戦略の立案においてPEST分析は必須のフレームワークといえるでしょう。
PEST分析については以下の記事で詳細に解説しているため、ぜひご覧ください。
SWOT分析
SWOT分析とは、以下の4つの要素から事業分析を行えるフレームワークです。
・Strength(強み):自社が有する強み・得意な領域
・Weakness(弱み):自社が有する弱み・苦手な領域
・Opportunity(機会):市場や社会の変化で生じるプラスの要因
・Threat(脅威):市場や社会の変化で生じるマイナスの要因
SWOT分析は「プラス面・マイナス面」と「内部環境・外部環境」の2つの軸で分析を進められる点が特徴で、客観的に自社の状態を把握できるようになります。
外部環境を踏まえて自社の強みを活かした戦略を立てられるため、マーケティング戦略の立案において重要な役割を持ちます。
SWOT分析については以下の記事で詳細に解説しているため、活用の際はぜひご覧ください。
まとめ
本記事では4C分析の概要や目的、効果的なやり方などを解説しました。
4C分析は顧客目線で商品・サービスの価値や負担、購買利便性などを分析できるフレームワークです。
顧客の需要に沿って商品・サービスを開発する「マーケットイン」の手法がメジャーになっている昨今において、顧客目線で事業を分析できる4C分析は必須のフレームワークといえます。
また、従来からある4P分析やPEST分析、SWOT分析といった他のフレームワークを用いることで、より効果的な商品開発やマーケティング戦略の立案が可能となります。
いかに顧客に寄り添った商品・サービスを提供できるかは、事業の成功を大きく左右する要因となるため、本記事の内容を商品開発やマーケティング活動に活かしてください。
この記事の執筆者
久田敦史
株式会社ナレッジソサエティ 代表取締役
バーチャルオフィス・シェアオフィスを通して1人でも多くの方が起業・独立という夢を実現し、成功させるためのさまざまな支援をしていきたいと考えています。企業を経営していくことはつらい面もありますが、その先にある充実感は自分自身が経営をしていて実感します。その充実感を1人でも多くの方に味わっていただきたいと考えています。
2013年にジョインしたナレッジソサエティでは3年で通期の黒字化を達成。社内制度では週休4日制の正社員制度を導入するなどの常識にとらわれない経営を目指しています。一児のパパ。趣味は100キロウォーキングと下町の酒場めぐり。
【学歴】
筑波大学中退
ゴールデンゲート大学大学院卒業(Master of Accountancy)
【メディア掲載・セミナー登壇事例】
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