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競争を有利にする差別化戦略とは|メリットや成功例等をわかりやすく解説

[投稿日]2016/05/04 / [最終更新日]2023/07/22

競争を有利にする差別化戦略とは|メリットや成功例等をわかりやすく解説

事業の成功を大きく左右する要因の1つが「差別化」です。

他社と異なる性質を持った商品やサービスを作り出せば、市場での優位性の確立が可能となります。

価格を下げずに売上を伸ばせるといった様々なメリットが生じるため、起業前の方はもちろん、既に事業を開始している方も事業の差別化を検討しましょう。

本記事では差別化戦略を取るメリットや差別化のポイント、役立つフレームワークなどを解説しています。最後には差別化戦略の成功例も紹介しているため、ぜひご覧ください。

差別化戦略とは

事業運営における「差別化戦略」とは、競合他社の製品やサービスと比較して、機能やサービスに差異を持たせる戦略です。

差別化を行った商品・サービスの特異性に魅力を感じた顧客から支持を集めることが可能となります。

具体的には以下のような例があります。

・製品の重量が競合他社と比較して群を抜いて軽量である
・若者向けの市場で高齢者向けの商品を開発する
・店頭でのサービスが基本の市場の中で、オンラインでサービスを提供する など

差別化戦略はアメリカの経営学者である「マイケル・ポーター」によって提唱された「競争優位の戦略」の1つです。

【競争優位の戦略】
コストリーダーシップ戦略
差別化戦略
集中戦略

コストリーダーシップ戦略とは

コストリーダーシップ戦略とは、競合他社よりも製品やサービスの価格を安くする戦略です。

競合他社と近しい商品でも「他の商品よりも価格が安いから」という理由で顧客からの支持を集められます。

コストリーダーシップ戦略を取るには、安く売っても利益が出る仕組みを作る必要があります。「原価を抑える」「大量生産を行う」などが具体例です。

ただしコストリーダーシップ戦略を取ると、競合他社も追随して価格競争が発生する可能性がある点に留意しましょう。

コストリーダーシップ戦略を採用している企業の例として「サイゼリヤ」や「ユニクロ」「マクドナルド」などがあります。

集中戦略とは

集中戦略とは、特定の商品や市場に経営資源を集中させる戦略です。集中した経営資源の投入によって、市場内での自社の優位性の向上が期待できます。

また、規模や資金力が小さい企業でも、特定の商品や市場では大企業に対抗できるようになる点も魅力です。

ニッチな業界に参入すれば、その領域でのマーケットリーダーも目指せるでしょう。

ただし、市場の環境変化に弱い点がデメリットです。またニッチな市場で勝負しても、後々大企業が参入してくるリスクもあります。

集中戦略を採用している企業としては「ケンタッキーフライドチキン」や「しまむら」「スズキ」などが挙げられます。

差別化と差異化との違い

差別化と似た用語に「差異化」があります。差異化とは、競合他社の商品とは別ベクトルの商品として区別することです。

差別化は同じ項目を比較して優劣を付ける戦略ですが、差異化は別の新たな軸を作り出すイメージです。

差異化によって、カテゴリーが一緒でも同じ土俵にはあげられない商品を作れます。その結果、競合他社とは違うブランドコンセプトを確立していけます。

差別化戦略を取るメリット

企業が差別化戦略を取ると、事業の成功に繋がる様々なメリットが生じます。これらのメリットを活かした企業運営ができれば、事業の成功に近付くでしょう。

ここでは差別化戦略を取るメリットを4点解説します。

価格競争から脱出できる

商品やサービスの差別化ができれば、価格競争からの脱出が可能です。

差別化を行うと他の商品を比較した際の付加価値が付きます。その結果、価格が高くても付加価値に魅力を感じた顧客が購入したいと感じるようになります。

コストリーダ―シップ戦略などの検討が不要になり、他社が製品の価格を下げても追随する必要がない点は大きなメリットとなるでしょう。

利益率が向上する

差別化によって価格競争から脱出できれば利益率の向上が見込めます。

利益率が向上すれば必然的に手元に残る資金が増えるため、事業運営の資金が潤沢になります。

また、原材料費や人件費の高騰といった社会情勢の変化にも対応が可能です。

更に、商品・サービスの品質向上やアフターフォローの充実といった面に資金を使う選択もできます。その結果、企業や商品のファンが増え、売上高の更なる向上を目指せるでしょう。

業界への新規参入の抑制に繋がる

差別化によって市場での地位や優位性を確立できれば、新規参入の抑制にも繋がります。

その業界で成功するには、自社以上の差別化やコストリーダーシップ戦略が必須となるためです。

差別化には一定のコストを要し、最初から販売価格を下げる選択も一定のリスクがあるため、別の業界への参入を検討する事業者が増えます。

新規参入者が増えなければ企業の市場内での地位や優位性が安定するため、より長く事業を続けられるようになるでしょう。

自社の強みが明確になる

商品やサービスの差別化を進める中で、自社の強みが明確になります。

差別化戦略を進めるには、綿密な市場調査や自社分析が必要です。その中で自社の強みや市場での立ち位置、特徴などが明確になります。

自社の強みや特徴が分かれば、商品の差別化だけでなく経営方針の決定にも貢献します。また、明確なブランディングもしやすくなるため、方向性を見誤らず、安定した事業展開が可能となるでしょう。

差別化戦略以外にも目を向けるべき理由

差別化戦略は非常に有力な経営戦略の1つですが、他にも目を向けるべきポイントがあります。また、差別化戦略を取るデメリットも存在するため注意が必要です。

ここでは、差別化戦略以外にも目を向けるべき理由やデメリットを解説します。

同質化戦略を取る企業が多い

他社の差別化に対して同質化戦略を取る企業も多いです。

同質化戦略とは、他者の差別化に対して似たような商品やサービスを展開する戦略です。

他社と同じ性質の商品・サービスを提供する「完全同質化」と、更に付加価値を与えた「改善同質化」が存在します。

いずれも資金力がある企業が取りやすい戦略となっています。

同質化戦略を取られると価格競争に持ち込まれる場合が多く、差別化によって生まれた優位性を保てなくなる可能性が生じるため注意が必要です。

市場や顧客の分析に時間や費用がかかる

差別化戦略の成功には入念な市場分析が必須です。顧客のニーズに沿わない差別化をしては、資金を投入しても売上の増加には決して繋がりません。

そして、市場や顧客の分析には一定の費用と時間を要します。

当然製品を開発するための費用も発生するため、一定のリスクもある点に注意しましょう。

既存客離れに繋がる可能性がある

差別化によって既存客離れに繋がるリスクが生じます。

顧客のニーズに沿わない差別化の場合、単に価格が高い商品という認識になってしまうためです。

その結果、他社の価格が低い商品やニーズに沿った差別化が行われている商品に顧客が流れてしまう可能性が生じるため注意しましょう。

既存客離れを起こさないためにも、顧客のニーズを的確に掴むことが非常に重要となります。

事業プランは既存のビジネスモデルから生まれるケースが多い

企業前から差別化を最重要視してしまうと中々事業計画が作れない可能性があります。ビジネスプランをゼロの状態から作り上げることは、非常に難しいためです。

そのため事業プランを立ち上げる段階では、明確な差別化は意識せず、既存のビジネスモデルを参考にすることがおすすめです。

既存のビジネスモデルをベースとすれば比較的商品や事業内容が定まりやすく、1つのオリジナリティを追加すれば十分な差別化になるケースもあります。

実際に、成功している事業もベースは既存のビジネスモデルといったケースが多いです。

これから事業を立ち上げる方は、差別化を最優先事項に持ってくるのではなく、客観的な市場の状況や自身の熱意なども参考にして決定すると良いでしょう。

差別化戦略で着目すべきポイント

一言で差別化といっても、差別化できるポイントは様々です。企業の実態や商品・サービスに即した部分の差別化を行いましょう。

ここでは差別化戦略で着目すべきポイントを4点解説します。

企業やブランドのイメージ

企業のブランドやイメージの形成によって差別化が可能となります。

顧客が「○○といえば(ブランド名)」というイメージを持てば、ブランドへの信頼感や期待感が生じます。その結果、多少価格が高くても商品・サービスの購入に繋がる仕組みです。

また、ブランディングができれば、顧客が企業のファンとなり、別のサービスや商品の購入に繋がる点もポイントです。

起業時のブランディングについては以下の記事で詳細に解説しています。ブランドやイメージでの差別化を図りたい方はぜひご覧ください。

起業時のブランディングのやり方とは~重要性や目的、成功のポイントを簡単に解説~

商品の品質・内容

商品やサービスの品質や内容、機能の差別化もメジャーな手段です。一例として以下のような手段があります。

・他社が真似できない機能を搭載する
・今までにはないデザインで製作する
・アフターフォローや付属サービスを充実させる

他の製品やサービスにはない負荷価値を付けることで、競合他社よりも高い価格でも顧客から選んでもらえるようになります。

顧客サービス

商品・サービスそのものではなく、顧客サービスで差別化する選択肢もあります。具体的には、接客の質の向上やアフターサービス、顧客との信頼関係の構築などです。

顧客サービスの質を上げると、差別化に加えて顧客のファン化やリピーターの増加が見込めます。

顧客の声を真摯に受け止めて反映していけば、商品・サービスの質の向上にも繋がるでしょう。

また、サービス業での顧客サービスは口コミでも広がりやすいです。素晴らしい対応を受けた顧客が口コミを投稿すれば、多くの集客に繋がるケースもあるでしょう。

流通チャネル

流通チャネルとは、商品が顧客に届くまでの経路です。具体的には以下のような要素が存在します。

・直接流通:製造者が直接商品を販売する方法
・間接流通:業者を介して商品を販売する方法
・オンライン流通:ECサイトなどを通じて商品を販売する方法

また、複数のチャネルを組み合わせた流通チャネルを「マルチチャネル」と呼びます。

商品やサービス自体の差別化が難しい場合でも、流通チャネルを変えることは比較的現実的です。

特に現在はECサイトの非常規模が拡大しているため、流通チャネルの差別化を考える際は検討が必須といえるでしょう。

差別化戦略に役立つ主なフレームワーク

差別化戦略を成功させるには以下のポイントを的確に分析する必要があります。

・市場および顧客
・競合他社
・自社の立ち位置や環境

これらの明確化にはフレームワークを用いた分析がおすすめです。

ここでは、差別化戦略に役立つフレームワークを3つご紹介します。

3C分析

3C分析とは、以下の3つの「C」について分析できるフレームワークです。

・市場・顧客(Customer)
・自社(Company)
・競合(Competitor)

外部的要因の市場や顧客、競合と、内部的要因の自社の分析を行うことで、自社の強みを見つけられます。

3C分析では基本的に市場や顧客の分析から始めます。業界の規模や将来性、成長性、顧客のニーズなどを把握しましょう。

次に競合他社のシェアや推移、特徴、業界での立ち位置、想定される新規参入を判断し、自社の状況と比較していく流れです。

3C分析については以下の記事で詳細に解説しています。より深い知識を得たい方はぜひご覧ください。

3C分析とは

SWOT分析

SWOT分析とは、以下の4つの要因を分析するフレームワークです。

・Strength(強み)
・Weakness(弱み)
・Opportunity(機会)
・Threat(脅威)

内部要因である強みと弱み、外部要因である機会と脅威に分けたうえで、取るべき行動や課題などを明らかにできます。

SWOT分析では基本的に外部要因の分析から始めます。外部要因が自社に与える影響を判断可能です。

また、内部要因は外部要因に左右される点を踏まえて分析を行います。

SWOT分析については以下の記事で詳細に解説しています。SWOT分析についての理解を深めたい方は参考にしてください。

「SWOT分析」を用いて新しい戦略を練る

STP分析

STP分析とは、以下の3つの項目について分析できるフレームワークです。

・Segmentation(セグメンテーション)
・Targeting(ターゲティング)
・Positioning(ポジショニング)

セグメンテーションとは「市場の細分化」です。顧客を近しいニーズごとに分類してユーザー層を分けます。

市場を細分化する際は以下の4つの指数を用いることが一般的です。

・人口統計的変数(デモグラフィック)
・地理的変数(ジオグラフィック)
・心理的変数(サイコグラフィック)
・行動変数(ビヘイビアル)

また、ターゲティングとはセグメンテーションで分類した市場の中から、商品のターゲットに最も適した層を選ぶ作業です。

そしてポジショニングとは「市場内の自社の立ち位置」を指します。価格や品質、販売チャネルといった様々な要素を競合他社と比較しましょう。

競合の有無や競合他社と比較した際の強みなどを踏まえて、自社が勝負できる立ち位置を探すことが大切です。

差別化戦略の成功例

成功している企業の多くでは差別化戦略が取られています。

ここでは、差別化戦略を取って成功した有名企業の例を紹介します。

スターバックスコーヒー

スターバックスコーヒーの差別化の大きなポイントは「サードプレイス」です。サードプレイスとは、自宅でも職場でもない、第三のリラックスできる場所の提供です。

工夫が施されたおしゃれな内装によって「この場所で過ごしたい」と感じさせ、競合他社よりも高い単価の下で多く集客に成功しています。

また「各店にバリスタがいる」「デザート系のドリンクを数多く取り扱う」「商品のカスタマイズが可能」といった要素も差別化の要因となっています。

参考:スターバックス コーヒー ジャパン

モスバーガー

ハンバーガーチェーン店であるモスバーガーの差別化のポイントは、メニューの豊富さと価格です。

モスバーガーのメニュー数は競合であるマクドナルドよりも豊富です。多様な好みのニーズに応えられるため、競合より価格が高くても集客に成功しています。

また、住宅地や商業施設などに多く出店している点も差別化の要素です。ファミリー層や高齢者の集客がしやすいことから、競合のマクドナルドとは異なる層を集客できていると考えられます。

参考:モスバーガー公式サイト

Apple

Apple(アップル)の差別化の方法は製品の性能にあります。

具体的には「独自性」「デザイン性」「操作性」を追求した製品開発が行われている点が特徴です。

androidやWindowsよりも高価な価格設定となっていますが、多くのファンが存在する要因となっています。

参考:Apple(日本)

ロイヤルホスト

ファミリーレストランのロイヤルホストにおける差別化のポイントは、メニューや店内の雰囲気です。

多くのファミリーレストランは、ファミリー層に安い価格で商品を提供している点が特徴です。一方でロイヤルホストは1品2,000円前後の商品も多く、高級メニューに特化したサービスを提供しています。

また「経済的にややゆとりのある40代女性」をメインターゲットにしている点も特徴です。

ターゲットに即したメニューやサービスの提供を行っているため、高単価でも集客に成功しているといえるでしょう。

参考:ファミリーレストラン ロイヤルホスト

差別化には自己表現起業も大切

事業の差別化には自己表現起業も大切です。

自己表現起業とはその名の通り「自分を表現するための起業」を指します。起業の動機としては「もっと自分らしく仕事がしたい」「才能を活かした分野で活躍したい」「好きなことを仕事にしたい」などです。

自己表現起業は経営者本人の事業に対する熱量や思いが強いです。

自己実現起業を通して提供されるサービスは、これまでの企業サービスと内容が一緒でも、高い熱量や強い思いによって一種の差別化に繋がるといえます。

このように考えると、起業そのものと自分が好きなことを仕事にするタイミングが揃えれば、意識的に「差別化戦略」を構想せずとも、差別化は十分に図れる可能性があります。

後はいかに自分自身、または自社をPRしていくかに頭を悩ますという話になるでしょう。

当然好きな分野と成功する分野は異なる可能性がありますが、事業プランを決める際の大きな要因になります。

まとめ

今回は事業運営における差別化について解説しました。

事業内容や商品・サービスの差別化を行うことで価格競争から脱出や利益率の向上、新規参入者の抑制などが可能となります。

企業のイメージや商品、顧客サポート、販売チャネルなどに着目して、差別化を目指してはいかがかでしょうか。

本記事では差別化戦略に役立つフレームワークも紹介したため、ぜひご活用ください。

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