現在、スマートフォンの普及によってネットショッピング市場が急激に拡大しています。その結果、自宅にいても簡単に買い物を楽しむことができ、非常に便利な世の中になりました。
しかしその反面、詐欺まがいの出品や出品者の音信不通等、消費者被害が増加しているのも事実です。そして、被害に対する消費者保護も十分ではありませんでした。
そこで新たに成立した法律が「デジプラ法」です。デジプラ法が施行されることによって、悪質な出品者の情報を開示できるようになる等、より安心して取引デジタルプラットフォームを活用できるようになります。
消費者にとってはプラスの要素しかない当制度ですが、デジタルプラットフォームの運営者や、商品の出品者にとっては様々な様々な変更点があります。そのため、デジプラ法やそれに付随する知識を深めることは必須と言えるでしょう。
そこで当記事では、デジプラ法の概要や影響、付随知識を分かりやすく解説しているため、是非参考にしてください。
目次
「デジプラ法」とは?
「デジプラ法」とは「取引デジタルプラットフォームを利用する消費者の利益の保護に関する法律」のことです。
2021年4月に成立した法律であり、消費者庁が初めて政府提出法案として単独提出した実体法でもあります。
デジプラ法が成立したことによって消費者保護が進み、より安全にネットショップやフリマアプリ等の取引デジタルプラットフォームを使用できるようになりました。
デジプラ法が成立した背景は?
デジプラ法が成立した背景として、インターネット通販の消費者被害が挙げられます。
インターネット通販では対面せずに取引を行うため、販売者の実態や商品の情報が判断できないことが多々あります。その結果、以下のような被害が数多く発生しています。
・購入した商品に欠陥があった
・購入した商品が偽物であった
・販売者が音信不通となった(連絡先が分からない)
そして、このような悪質な取引に対する消費者保護は十分ではありませんでした。
そこで、取引デジタルプラットフォームを利用する消費者を保護する制度が必要という考えから、デジプラ法が制定されました。
デジブラ法の目的は?
上述した通り、デジプラ法は取引デジタルプラットフォームを利用する消費者を保護する目的で制定されました。
目的を達成するための主な手段は「悪質販売業者の実態の把握」「危険商品等の流通の防止」です。
デジプラ法によって悪質な販売評者の氏名や住所の開示や、利用停止の要請が可能となるため、悪質業者の減少に繋がることが期待されます。
取引デジタルプラットフォームとは?
デジタルプラットフォームを簡潔に説明すると「商品を販売する出品者と、購入したい消費者をマッチングさせる場をオンライン上で提供しているサービス」を指します。
具体的なデジタルプラットフォームを挙げると「Google」や「Amazon」、「Facebook」「メルカリ」等があります。
そして「取引デジタルプラットフォーム」とは、デジタルプラットフォームの中でも以下のような機能を有するもののことです。
・販売業者等との通信販売に申し込みをできる機能
・競り等の方法によって、通信販売の相手方となるべき消費者を決定する手続きに参加することができる機能
つまり「ネットショッピングサイト」や「ネットオークションサイト」が取引デジタルプラットフォームということです。
デジプラ法の具体的な内容は?
それでは、デジタル法が施行されることで、どのような変化が起きるのでしょうか。
ここではデジプラ法の具体的な内容を解説します。
参考:取引デジタルプラットフォームを利用する消費者の利益の保護に関する法律案 概要
取引デジタルプラットフォームの提供者に対する努力義務
デジプラ法が制定されたことで、取引デジタルプラットフォーム提供者に対して努力義務が課されました。具体的には以下の3点を実施する必要があります。
①消費者が販売業者等と円滑に連絡ができるようにするための措置
②販売条件等に関する消費者からの苦情を受けた場合の、事情調査等の措置
③必要に応じて販売業者の特定するための情報提供を求める措置
悪質出品者の出品の停止
デジタルプラットフォームに危険商品等が出品され個別法の執行が困難な場合、内閣総理大臣は当該取引プラットフォーム提供者に対して出品削除を要請できるようになりました。
出品停止要請の要件は以下の3つです。
・危険商品等が出品されたこと
・出品者に対して個別法の執行が困難であること
・取引デジタルプラットフォームを利用する消費者の利益が害される可能性があること
なお、要請に応じたことによって販売事業者に損害が発生した場合、デジタルプラットフォーム提供者は免責されます。
消費者が販売業者の情報の開示を請求できる権利
消費者が販売業者の情報の開示を請求できる権利が創設されました。消費者は以下の条件を満たしている場合に限り開示を請求することができます。
・売買契約に関する、出品者への債権を有していること
・上記債権を行使するために、販売業者等の情報を確認する必要があること
・販売業者の情報を用いる目的な不正な目的でないこと
なお、当開示によって販売業者が損害を受けたとしても、取引デジタルプラットフォームの提供者は免責されます。
民間協議会・申出制度の創設
行政機関や取引デジタルプラットフォーム提供者から成る団体、消費者団体等により構成される民間協議会が創設されます。そして、民間協議会は各主体が取り組むべき事項を協議します。
また、消費者被害に遭う恐れがあるケースについて、消費者等から消費者庁に対して適切な措置を求めることができる制度も創設されました。
デジプラ法の成立によって誰に、どのような影響が及ぶ?
デジプラ法は取引デジタルプラットフォームを利用する様々な人に影響を及ぼします。
ここでは、デジプラ法によって生じる影響を各主体ごとに解説します。
デジタルプラットフォーム提供者
取引デジタルプラットフォーム提供者は、出品者の利用停止や消費者からの開示請求への対応をする必要があります。
また、上記した努力義務の内容についても措置を行う必要があります。これは努力義務に留まるため、具体的な罰則はありませんが、消費者からの信頼を維持するためにも確実に行うべきと言えるでしょう。
販売業者
適切な事業を行っている販売業者については、大きな影響はありません。
しかし、危険商品や詐欺商品を出品している悪質な取引販売業者にとっては、特定や出品停止がされやすい環境となりました。
消費者
今回、消費者は保護される側であるため特段行うべきことはありません。
しかし悪質業者の出品物によって大きな損害を受けてしまった場合は、開示請求をするという選択肢が生まれます。
デジプラ法は個人間の取引では対象にならない
注意が必要な点として、デジプラ法の対象はあくまでも業者であることが挙げられます。個人間の取引では対象になっていません。
そのため「個人の不要物を出品・購入したら不良品であった」等の被害は防止できないため注意しましょう。
「個人」と「業者」の明確な線引きとなるガイドラインの策定へ
ネットショップに業者として出品する場合、住所や名称などの表示が必要です。その一方で個人の場合は不要となっており、悪質業者が個人を装って出品をしているケースが問題となっています。
そこで消費者庁が個人と業者を線引きするガイドライン案が示されました。ガイドライン案によると、以下に該当する出品者は業者に該当する可能性があると判断されます。
・新品や未使用品を大量に出品している
・同じメーカーや型番、特定の商品を商品を大量に出品している
なお、引っ越しや遺産整理等に伴って大量の商品を出品する場合は対象外となります。
同時に特商法の改正も行われた
「特商法」とは「特定商取引に関する法律」のことです。2021年4月にこの特商法の改正も行われました。
改正の内容はデジプラ法と同様に消費者保護の目的が主です。
それでは、特商法の改正で何が変わるのでしょうか。
H3特商法等改正法の具体的な内容は?
特商法の改正で消費者保護に繋がる主な内容は、通信販売の詐欺的商法への対策です。具体的には以下のような対策が行われます。
・定期購入でないと誤認させる表示の直罰化
・定期性誤認表示による申し込みの取消しを認める制度の創設
・通信販売における契約解除を妨害する行為の禁止
・定期性誤認表示や解除の妨害を、的確消費者団体の差止請求の対象に追加
また、取引デジタルプラットフォームの消費者保護に直接の関係はありませんが、以下の改正もされた点に留意しましょう。
・売買契約に基かない送り付け商法への対策
・契約書等の事業者が交付するべき書面のデジタル化
・クーリング・オフ通知のデジタル化
・外国執行当局の情報提供制度や、行政処分の強化
参考:令和3年特定商取引法・預託法の改正について | 消費者庁
特商法等改正法で何が変わる?
特商法の改正によって、通信販売の消費者被害が減少することが期待できます。
例えば「ネット通販で「お試し」と表示することで、消費者に誤認させ定期購入させる」ような業者が減少に繋がります。
また、上記のような定期性誤認表示によって契約した内容を取消しできるようになるため、消費者が詐欺まがいの商品を購入するリスクも大きく減少するでしょう。
「Sマーク」によってトラブルを未然に防止することが可能
悪質な業者から質が低い商品を購入しないためにも「Sマーク」を理解しておきましょう。
Sマークとは、家電製品の安全性を表す印です。第三者認証機関によって製品試験と工場の品質管理が行われていることが証明されます。
消費者は、このSマークが付いている商品を購入することで、品質が低い家電製品を購入することを防ぐことができます。
Sマークは法律として確立された制度ではありませんが、消費者が自らを守るという意味でも理解しておくべきでしょう。
※参考:Sマークの意味は? – 電気製品認証協議会(SCEA)
まとめ
現在はインターネット通販の市場規模が急激に成長しており、それに伴って悪質な出品者による消費者被害も増加してきています。
そこで、消費者保護を目的とした「デジプラ法」が制定されました。デジプラ法によって主に以下の点が変更となります。
・取引デジタルプラットフォームの提供者に対する努力義務
・悪質出品者の出品停止
・消費者が販売業者の情報の開示を請求できる権利
・民間協議会・申出制度の創設
これらの制度が施行されることによって、悪質出品者の特定や出品停止を行うことが可能となります。また、被害に遭った消費者も販売業者の情報を開示も可能となったため、損害賠償の請求も行いやすくなりました。
一方で取引デジタルプラットフォームの提供者は、様々な措置を行う必要があります。努力義務もありますが、消費者の信頼を維持するためには措置を行う必要があるため、早めの対策が必要です。
そのため、デジプラ法の内容を正しく理解し、今後どのような変化が訪れるかを確認しておきましょう。
この記事の執筆者
ナレッジソサエティ編集部
ナレッジソサエティ編集部
2010年設立の東京都千代田区九段南にある起業家向けバーチャルオフィス「ナレッジソサエティ」です。2010年からバーチャルオフィス・シェアオフィス・レンタルオフィスの専業業者として運営を行っております。バーチャルオフィスのこと、起業家に役立つ情報を配信しています。「こういう情報が知りたい」といったリクエストがあれば編集部までご連絡ください。
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