「大手システム開発会社という看板と親しくしてくれていたのでした・・・」
そう語るのは、システム開発会社を経営されていたS.H様です。
こんにちは、東京千代田区九段下のシェアオフィス・バーチャルオフィスのナレッジソサエティの渡部です。
このインタビュー記事では、各業界で活躍している経営者に起業や経営の難しさ、失敗談や反省を伺い、お伝えします。
各業界で活躍されている経営者も多数の失敗やテストを繰り返し、ようやく成功へとたどり着くことが多いと思います。そこで今回は中々表には出ない失敗談や苦労話を聞いてみたいと思います。厳しい時期の乗り越え方や「今ならこうする。あの時もっとこうすれば良かった。」という反省点を語っていただき、皆様にご提供していきます。
シリーズ第七回目となる今回は、システム開発会社を2年間経営されていたS.H様です。
S.H様は、大学卒業後、大手システム開発会社でシステムエンジニアとして勤務。その後、30歳の時に独立してシステム開発会社を設立。しかし、計画通りに受注が成功せずにわずか2年で会社を閉じた。現在はサラリーマンに復帰しています。
今回私は、S.H様に、“これまでの失敗談や反省点”について語っていただきました。
これから起業する人や新たな挑戦を試みている方にぜひお読みいただきたい記事です。
会社名:株式会社システムクリック
名前:S.H(男性)
事業内容:システム開発
1.経営の難しさ、失敗談、反省点
1-1.会社の看板を自分の力と勘違いして招いた躓き
私は大手のシステム開発会社に数年間勤務していたため、多くの1次下請けのシステム開発会社と人脈を築くことができていました。
システムエンジニアとして経験を積んだ後、システム開発会社を設立のために独立しました。主な売上策は、これまでビジネスで付き合いのあった1次下請けのシステム開発会社から仕事を受注して会社を大きくしていこうと考えたのです。
ところが、実際に独立してみると計画通りには全く進みませんでした・・・付き合いのあったシステム開発会社から仕事を受注することができませんでした。
いわゆる本音と建前を見極めることができていなかったのです。大手システム開発会社に在籍していた時に、1次下請けの会社の管理職に「今度独立しますので、ぜひ仕事をください」と依頼したところ、2つ返事で「もちろんです。これからも良い関係を続けていきましょう」と言っていただけました。
しかし、実際に独立して挨拶に行くとけんもほろろに冷たい態度をとられるケースが頻発したのでした。1次下請けの会社の人たちは私と親しくしてくれていたのではなく、大手システム開発会社という看板と親しくしてくれていたのでした・・・
これから起業される方には、コネクションだけに頼らなくても取引先を見つけられるように策を練った上で独立されることをお勧めします。
当時は頼りにしていただけにとても残念な気持ちでしたが、今振り返ってみると元々いた会社から仕事を横取りするような形になってしまいますし、下請けの方達の立場や気持ちを全然考えていなかったことでこの結果は必然だったのかもしれませんね。
1-2.どんどん減っていく500万円
独立してすぐに仕事を受注できるという前提で考えていたため、手元資金は500万円程度しか用意していませんでした。
それでも資金負担を軽減することは当然で、当分の間、自分自身の給料は0円に設定し、電話はすべて自分の携帯電話にかかってくるようにしました。オフィスはレンタルオフィスを借りていました。
ところが、開発案件の受注が成功しないため、節約していても手元資金はどんどん減少していきます。必要経費である開発用のハイスペックのパソコンを2台購入しましたし、移動用の交通費も1ヶ月分も貯まると意外と高額となります。
さらに、なんとしても仕事を受注しなければならないと思い、サラリーマン時代に付き合いのあった会社の管理職を接待することもしばしばありました。想定外に接待交際費を使用してしまったのです。
500万円の手元資金があっという間に6ヶ月で消えてなくなりました。
これから独立される方は、手元資金については余裕をもって用意されることをお勧めします。交通費や接待交際費など会社勤めの時は当たり前のように使っていましたが、お金を管理する立場となってからは毎日減っていく残高と向き合うことも仕事になります。
1-3.スキルだけ十分な人材を採用した結果
独立してから1名システムエンジニアを採用しましたが、人間関係が円滑に運ばずに苦労しました。
原因は私が今まで人材採用の経験がなかったことにありました。
即戦力が欲しかったので、システム開発のキャリアだけを重視して正社員として採用してしまったのです。採用してからわかったのですが、この社員と私は相性が悪かったのです。雑談をしていても話が合いませんし、私はタバコが苦手で全く吸いませんが彼はヘビースモーカーのため頻繁に喫煙室に行ってはタバコを吸っていました。戻ってきた彼からタバコの匂いがすることに私は耐えられませんでした。次第に私が彼を嫌がるようになると、私の気持ちは彼にも伝わっていました。
すると、採用して6ヶ月くらい経過した頃から、私と彼は至近距離にいてもメールで会話をするようになってしまったのでした。
スキルだけで正社員採用を決めてはいけないのだと実感させられました。特に独立当初であれば話し合いも多くなりますし、組織の中心となる可能性が大きいので一緒にいて苦痛な人材は避けるに越したことはありません。
スキル以外にも何を重視するかをリストアップした上で、採用面接に臨むことをお勧めします。
単価は上がりますが必要な時だけフリーのエンジニアを頼る手もあったなあと思います。
2.まとめ
・会社員時代の肩書は無力となる
・資金は余裕を持って用意する
・人材採用の方針を決める
弊社のバーチャルオフィスへの入会審査では、どのように売上を立てる予定なのかを聞くことがあります。S.H様と同様に前職時代の繋がりや紹介をメインと答える方がたくさんいらっしゃいます。
それはもちろん悪いことではありません。既に信頼を築けていると思いますので、0から集客するより確実で早いです。
しかし、今回のインタビューのようなことが起きかねません。同じ顧客とずっと取引が続く保証はありませんので既存のお客様への営業とともに新規のお客様へのアプローチを構築することをお勧めいたします。
以上、第七弾は2年間システム開発会社を経営されていたS.H様でした。
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