年間数百社の起業シーンに立ち会わせていただいていますが、中には残念ながらうまくいかずに廃業される方もいらっしゃいます。そういう方はいったいどういう方なのか?私なりに特徴を挙げさせていただきました。
いいものは黙っていても売れると思っている人
売るための仕組みや方法を考えないまま起業をスタートさせてしまう人がいます。どんなに良い商品やサービスであったとしても認知をされなければ存在していないのに等しいというのはよくわかると思いますが、これはホントに多いです。どうやって販売していくのかという戦略がないと売上は立ちません。そして売上が立たなければ資金はあっという間にショートしてしまいます。
また自分でよいと思っているだけで、困りごとの解決をするという視点を持っていないという場合もあります。「こういう商品があるんだけど、どう売ったらいい?」こういう質問を投げかけられる場合があるのですが、こういう質問をする時点で経営者失格です。困りごとがあるからこそサービスや商品を考え出して提供するという視点がないためにこういう質問が出るのです。料理が売れる一番の要因は美味しい料理を提供することではありません。お腹が空いて空腹に耐えかねている人を見つけることです。
よいビジネスモデルさえあればよいと思っている人
よいビジネスモデルさえあれば起業がうまくいくというものではありません。誰もが思いつかない革新的なアイデアというのはそうそう簡単に思いつくものではありません。ほとんどのアイデアはすでに世の中に出てしまっていると考えてもよいくらいです。仮に誰も思いついていないビジネスを思いついたとしても他の人がすぐに同様のサービスを始めるでしょう。そんな中でよいビジネスモデルだけでビジネスがうまくいくということはほぼありえません。
それよりも大切なことは平凡な考えだったとしても、誰にも負けないスピードでサービスを提供するだとか、誰にも負けないアフターサービスを行うだとかいった、「平凡なことだったとしてもそれを素晴らしく行う」ことでビジネスを成功させるということです。そのためにはいろいろなことを実行しPDCAを回しながらビジネスを改善していくことが大切です。
即行動に移せない人
上記とかぶりますが、色々な問題点を早くあぶりだして、早く解決するためにはすぐに行動に移せるということが大切です。最初に考えた通りのビジネスモデルのままで回している成功企業はほとんどいないのではないのでしょうか?つまり最初から考えた通りに物事は運ぶのではなく、やってみなければわからない事がたくさんあるのです。そういった場合ビジネスを運営して行く中で、サービスの不具合・修正点が出てきますが、それらを素早く修正してよりよいものに改善していくことが大切です。
何でも自分でやろうとする人、チームを作れない人
何でも自分でやろうとするというのはビジネスの発展を遅らせることになります。経営をするということは、売上を立てることだけではありません。売上を生まない雑務がとても多くなります。納税のための作業、支払い作業、記帳作業など…。一人の会社だろうが、複数の従業員のいる会社であろうが、こういうことは必ず行わなければなりません。これを社長が行っていたら、一番大切な売上を立てることに手が回らなくなります。まわるにしても100%のリソースを注げません。社長のリソースをできるだけ確保するために、コストを払って専門知識を持った人に業務をお願いするということが大切なのですが、その部分をケチる人がいます。もちろんコスト管理をしっかりして無駄な費用は使わないということはとても大切ですが、一番価値のあるものは社長自らのリソースです。そのリソースの大切さを認識し、コストをかけても不要な部分への配分を減らすことができない人は大きな成功は望めないでしょう。
これは必ずしも人を採用することとイコールではありません。月次決算を行うために税理士を顧問にする。WEBからの売上を上げるためにWEBマーケティングサービスを利用する。様々な雑務をこなしてもらうためにオンライン秘書を導入する。こういう専門家による経営チームを組織して、それぞれの担当分野をしっかりと担う人を持つことが大切です。
人を育てられない人
商売を1人でやるのには限界があります。もちろんフリーランス・ひとり会社として売上等の拡大を一切求めないということでしたら、それはそれでよいのですが、会社を大きくしていきたいということでしたら、人を採用し育てることは避けても避けきれません。会社が一定の規模になってきますと、経営者は現場で仕事をするより、仕事をする人を採用し現場に配置していくという業務の割合が多くなってきます。その一方で自分で立ち上げた会社ですので、その会社の業務は社長が一番精通していますので、なかなか仕事を任せるということができないというジレンマに陥ります。
「自分でやった方が早いよ!」と思うことも多々あるでしょう。しかし、そこをぐっとこらえ、粘り強く育て上げることができる会社が大きくなっていきます。資金が潤沢であれば優秀な人材を高額の報酬で採用すればよいですが、それはやっと軌道に乗ったという会社では簡単にできることではありません。ダイヤの原石を見つけ、丁寧に磨いていくことができる会社が成長できるのです。
信念と素直のバランスが取れていない人
事業を行っていれば様々な情報が外から入ってきます。その情報に対してどう反応するかはとても大切です。自分の考えに固執してマーケットからおいていかれてしまってはいけませんし、いろんな意見に振り回されてしまい軸がぶれまくってしまうこともよくありません。
信念ということであれば、いったん決めたターゲット層は崩さないようにするということは大切でしょう。例えば富裕層向けに高付加価値のものを比較的高額で販売するという方針を決めた場合、数量が増えずに焦ったりすることがありますが、その焦りに負けて値引きをしてしまうということもよくあります。そこをぐっと声らえることは大切です。その一方で素直ということであれば、富裕層向けとして開発した商品に対する富裕層からのフィードバックなどは真摯に受け止めて、至らないところがあれば徹底的に改善するというスタンスはとても大切です。
これは一例ですが、ブレない軸を持つこととよい意見は取り入れるということのバランスはとても大切です。
ITに疎い人
今から起業してビジネスを立ち上げていく場合にITはほぼ必須といってよいのではないかと思います。コンタクト手段としてメールは必須ですし、WEBは名刺としての性質もありますのでを持っていない会社はとても怪しく見えてしまいます。もうITに疎いという言い訳は通用しない状況になってきています。
もちろん新しく出たサービスというは知らないことも多いと思いますのでそれは仕方ないことですが、最初からわからないという拒絶反応を示して前に進んでいかないような人でしたらビジネスは諦めたほうがよいと思います。
また自分は使えない場合でもITを使って何をしたいかが明確であることは絶対に外せません。これは簡単なことでかまいません。「WEBから集客できるようにしたい」「会計業務をもっとスムーズにしたい」などの要望を持つことができればそれを実現してくれる専門家はたくさんいます。
数字をうまく見られない人
経営をしていく上で一番大切なことは、現金(キャッシュ)を適切に蓄えているかということです。仮に売上が全くあげられなくても、現金があれば費用の支払いができますので倒産することはありません。その一方で売上が上がっていても現金がなければ倒産してしまいます。いわゆる黒字倒産というものですね。
つまり経営者はキャッシュをうまく管理しなくてはならないのです。このキャッシュ管理ができないという人は経営を危うくしてしまいます。起業当初は毎月の売上や費用、そしてキャッシュの出入りがおおよそ万単位くらいでは把握できないと厳しいでしょう。
もちろん得手不得手がありますので、自分で難しいという場合はその能力がある人を採用するか、外部に求めてください。大切なことは経営者にその気があるかということです。
投資するという感覚が持てない人
投資をするという感覚が持てない人も起業に向かないと言えます。例えばWEBサイトの制作費が100万円だとします。これを100万円という価格だけを見て高いと判断する人は投資をするという感覚がないと言えると思います。
100万円が高いか安いかという判断については、その100万円を使ってどくらいのリターンが得られるかで判断すべきです。100万円を使って50万円しか利益を上げることができないのであれば、それは「高い」と判断するべきですし、逆に500万円の利益を上げることができるのであれば、それは「安い」ということになります。ここの判断が単なる金額での判断か、投資に対するリターンでの判断か重要で、投資をするという感覚がない人は結局「安物買いの銭失い」となってしまい収益をあげるのに苦労する可能性が上がります。
これはバーチャルオフィスの場合もあてはまります。バーチャルオフィスの場合、月額の利用料金の差額は業者間で大きな違いはありません。1万円を超えるような差額はあまりなく、数千円の差ということがほとんどです。1日あたりで換算すると数百円という感じになるのですが、その他の要因を考慮せず値段だけで選択をされるという方が意外に多くいます。住所さえあればどんなところでもよいという方はとにかく安いところを選ぶということでよいと思いますが、打ち合わせやミーティング、カウンセリングのためのスペースなどに使う場合は、値段だけでなくその他の部分も含めて検討する必要があると思います。それができない起業家が「付加価値が大切」なんて言う資格ないですよね。