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MECE(ミッシー)とは何か│概念や具体例、4つの切り口などをわかりやすく解説

[投稿日]2021/03/19 / [最終更新日]2024/03/31

MECE(ミッシー)とは何か│概念や具体例、4つの切り口などをわかりやすく解説

起業家や経営者にはもちろん、日常生活を送るにおいても重要なスキルとして「ロジカルシンキング」があります。

そして、ロジカルシンキングの基本的概念といわれるのが「MECE(ミッシー)」です。

MECEを基に理論的な思考ができれば、意思決定やコミュニケーションのスピードが上がり、仕事における再現性の向上も見込めます。

ビジネスや事業運営においても周りに差を付けられる大きな要因となるでしょう。

そこで本記事では、MECEの概要や具体例、アプローチ方法などを解説しています。

最後にはMECEの実践のために活用できるフレームワークも紹介しているため、ぜひご覧ください。

MECE(ミッシー)とは

MECEとは「Mutually Exclusive and Collectively Exhaustive」を表す造語で、読み方は「ミッシー」です。

直訳すると「お互いに重複せず、全体に漏れがない」を意味します。

・Mutually(お互いに)
・Exclusive(重複せず)
・Collectively(全体に)
・Exhaustive(漏れがない)

分かりやすくいえば「漏れもダブりもない状態」です。

MECE自体は思考のテクニックやフレームワークではなく、単に「状態」である点に留意してください。

MECEが重要視される理由

MECEが重要視される理由は「問題の解決策を発見する指針となる」ためです。

問題解決の際には、以下の点を明確にする必要があります。

・どこに問題があるのか
・なぜその問題が生じたのか
・どのような解決方法を取るべきか

これらを適切に判断するには、問題を細かく分解して考えることが重要で、分解を行う際のコツがMECEです。

解決策に漏れがあるとそもそも問題を解決できない原因となり、ダブりがあると解決まで時間がかかる可能性が生じます。

そこでMECEを意識して重複や漏れなく思考できれば、物事を正しく整理でき、効率的に最良の判断が可能となるのです。

なお、問題の細分化を行うことを一般的に「構造化」と呼びます。

またMECEの概念に則って説明や報告、プレゼンができれば、相手に納得感を与えられます。

「説明されなかったが○○のケースもあるのでは?」「○○と△△は同じことでは?」などの疑問が生じないため、強い説得力を与えられるでしょう。

MECEとロジカルシンキングの関係性

MECEはロジカルシンキングの基本的概念といわれています。

ロジカルシンキングとは「論理的思考」を指し、筋道立った合理的な思考様式やその方法論をいいます。

簡単にいえば「目の前の問題を解決するために、さまざまな観点から解決策を検討し、最も適切な対策や対処法を見つける手法」です。

ロジカルシンキングの習得によって、以下のようなメリットを得られます。

・意思決定やコミュニケーションの速度や効果が上がる
・仕事の再現性高まる
・クリエイティビティ(創造性)が向上する

また、ロジカルシンキングを構成する要素には下記が挙げられます。

・主張と根拠に筋道が通っている
・バイアス(思考の歪み)にとらわれない
・合理的である
・物事を適切に分解できる
・因果関係を正しく把握できる
・何かを「考える」ことにおいて言葉や数字を適切に扱える

この中の「物事を適切に分解できる」に密接に関係しているのがMECEです。

MECEの2つのアプローチ手法

MECEにより物事を整理するための手法には、主に以下の2つがあります。

・トップダウンアプローチ
・ボトムアップアプローチ

ここでは、それぞれの手法を詳しく解説します。

トップダウンアプローチ

トップダウンアプローチとは、物事の全体像を確認して大枠を決めた後に、細かい要素を当てはめていく手法です。

問題や課題の全体像が見えているので、大局的に物事を判断でき、着地点を意識しながら分解できます。

例えば「新規製品の販売」という大きな枠を考える場合に「仕入」「製造」「流通経路」などと分類していくイメージです。

ただし、全体像や方向性が曖昧な状態でトップダウンアプローチを行うと、ダブりや漏れが出る原因となるため不向きといえます。

ボトムアップアプローチ

一方でボトムアップアプローチとは、特定の細かい要素に着目してグルーピングを行い、全体像を形成する手法です。

全体像が曖昧で、ノウハウや情報がなくても思考しやすい点が魅力といえます。

例えば商品にチョコレートやクッキーがあったら、グルーピングして「お菓子」というカテゴリを作るようなイメージです。

全体像が不明瞭なためダブりや漏れが出る場合もありますが、未知の領域の場合はトップダウンアプローチよりも効率的に思考ができます。

MECEの4つの切り口

MECEの実践では「どのような切り口で考えるか」が重要となります。

具体的には、以下の4つの切り口で考えることが一般的です。

・要素分解
・因数分解
・対照概念
・時系列・工程の分類

ここでは、それぞれの切り口を詳しく解説します。

要素分解

要素分解とは、物事の全体像を把握したうえで、各構成要素を抜き出して分解・分類する切り口です。

分解した要素をすべて合わせると全体像になります。

要素分解は「積み上げ型」や「足し算型」と呼ばれることもあります。

因数分解

因数分解とは、分析対象の物事を計算式で表して各要素に分解する切り口です。

例えば事業の売上は「単価×販売個数」の計算式で表せます。

因数分解による考え方は「掛け算型」と呼ばれることもあります。

対称概念

対称概念とは、物事の構成要素の対称概念を挙げて分解していく切り口です。

具体的には「メリット・デメリット」「客観・主観」「内部・外部」などが挙げられます。

時系列・工程の分類

物事を時系列や工程の段階別で分解する切り口です。

例えばPDCAサイクルを例に挙げると「計画」「実行」「評価」「改善」などとなります。

MECEの状態・MECEではない状態を具体例で紹介

ここではMECEの状態とMECEではない状態の具体例を紹介します。

MECEではないない状態は「漏れがある」「ダブりがある」「漏れもダブりもある」の3つに分けられます。

具体例を確認して、MECEのイメージを固めましょう。

MECEの例

MECEとは漏れもダブりもない状態を指します。

例えば顧客層を年代別に分類して考えるとします。

・20歳未満
・20~30歳未満
・30~40歳未満
・40~50歳未満
・50~60歳未満
・60歳以上

上記の分類は、すべての顧客がいずれかに該当しており、2つ以上には当てはまらないためMECEの状態です。

MECEではない例:漏れがある

一方で「漏れがある」ことからMECEではない状態を考えます。

例えば、顧客を「職業」で以下のように分類した場合を考えます。

・学生
・正社員
・フリーター
・経営者
・個人事業主

このように区分した場合「派遣社員・契約社員」や「無職」とった顧客はいずれにも該当しません。

MECEではない例:ダブりがある

ダブりがあってMECEではない状態を考えます。

例えば、顧客を以下の4つの項目に分類するとします。

・男性
・女性
・子ども
・高齢者

まず男性と女性で区分しているので漏れはない状態です。

しかし「女性の子ども」「男性の高齢者」などもいるため、ダブりが出るケースがあります。

MECEではない例:漏れもダブりもある

例えば「学生」というカテゴリで以下のように分類します。

・小学生
・中学生
・高校生
・大学生
・受験生
・浪人生

この場合「高校生の受験生」なども存在するためダブりがあります。

また「専門学生」「大学院生」の学生いるので漏れもある状態です。

MECEの注意点

MECEには一部注意点や、効果を上げるために押さえるべき点などがあります。

MECEを取り入れる際は以下の4つを確認したうえで実行に進みましょう。

目的を明確にする

MECEを意識するあまり「漏れはないか」「ダブりはないか」ばかりに気を取られてしまう方もいます。

しかし、MECEはあくまでも「ロジカルシンキングを促進するための手段」です。

MECEが目的ではないため、実行の「何のために行うか」を明確にしましょう。

目的を明確化していれば、ある程度柔軟に要素の分解ができます。

また目的を見失うと、完璧を求めるあまり「細かく分類し過ぎて逆にわかりにくい」「無駄な調査や分類に労力を費やした」といった事態につながる可能性も生じます。

すべてのパターンを分類できるわけではない

MECEではすべてのパターンを分類できるわけではありません。

年齢や性別のように明確な線引きがあればMECEで分類できますが、主観によって分類が変わる物事も存在します。

例えば飲食店に目を向けると「コラボカフェ」は本当に従来からある「喫茶店」に分類できるか判断が難しいです。

また現在は事業の形態が多様化しており、顧客のニーズも客観的に断言できないケースも多く、MECEで分類できない可能性があります。

その場合は無理にMECEに当てはめるのではなく、最終目的から外れないことを意識して注釈や「その他」などの形で柔軟に分類していくことが大切です。

優先順位を付けて分析する

MECEで物事を分解したら、各要素に優先順位を付けて分析していきます。

そのためにも最終的な目的の明確化が大切です。

目的の達成に重要な要素に力を入れ、大きく影響を及ぼさない要素については最低限の分析で済ませる選択肢もあります。

優先順位を付けずにすべての要素を完璧にこなそうとすると、余計な時間や労力が発生する可能性があるため注意しましょう。

特に「漏れ」には気を付ける

MECEでない状態には「漏れ」と「ダブり」がありますが、特に「漏れ」には注意が必要です。

ダブりについては注釈の記載や柔軟な対応によって極端に効果が下がることは少ないです。

しかし、漏れについては問題の改善や分析の効果が著しく下がる可能性があるため注意してください。

MECEの実践のために活用できるフレームワーク

MECEの実践が難しい場合は、既存のフレームワークの活用もおすすめです。

ここではビジネスで使えるフレームワークを8つ紹介します。

ロジックツリー

ロジックツリーとは、さまざまな事項が絡み合う複雑な問題を整理する際に使うフレームワークです。

上述したようなMECE的な切り口で解決したい問題を細かい要素に分解し、それぞれに関連付けをしながらツリー上に視覚化(ロジックツリー)していきます。

視覚化した各要素に「何が」「どのように」「なぜ」などの疑問を投げ、考えられる関連事項を並べて整理、問題解決につなげます。

各要素の因果関係の明確化や根本原因の把握、優先順位の決定などに役立つ点が大きなメリットです。

3C分析

3C分析とは、以下の3つのCからマーケティング環境を分析するフレームワークです。

・Customer(市場・顧客)
・Competitor(競合)
・Company(自社)

3C分析によって自社の強みや弱み、外部環境などを客観的に把握でき、事業の成功要因を見つけられます。

新規事業の展開や、市場での立ち位置を評価する際などに用いられます。

3C分析については以下の記事で詳細に解説しているので、ぜひご覧ください。

3C分析とは│やり方・流れや目的、実践例などをわかりやすく解説

4P分析

4P分析とは、以下の4つのPを分析して、マーケティング手法の立案を行うフレームワークです。

・Product(製品)
・Price(価格)
・Place(流通)
・Promotion(プロモーション)

4P分析は企業視点で分析を行う点が特徴です。

現在は顧客視点で分析を行う「4C分析」も主流なフレームワークとなっています。

SWOT分析

SWOT分析とは、以下の4つの要素から事業分析を行うフレームワークです。

・Strength(強み)
・Weakness(弱み)
・Opportunity(機会)
・Threat(脅威)

SWOT分析は企業の内部環境と外部環境、プラス要因とマイナス要因の2つの軸で分析できる点が特徴です。

自社の強みだけでなく、弱みに着目した戦略を立てられる点がメリットとなります。

SWOT分析については以下の記事で詳細に解説しています。

SWOT分析とは?やり方や目的、マーケティングに役立つフレームワーク等を解説

PEST分析

PEST分析とは、以下の4つのマクロ要因による影響を分析するフレームワークです。

・Politics(政治的要因)
・Economy(経済的要因)
・Society(社会的要因)
・Technology(技術的要因)

マクロ要因が自社に与える影響を判断でき、より効果的なマーケティング戦略を立案できます。

マクロ環境は自社の行動で変えられない要因であるため、業界や市場の将来を予測して戦略を決められるPEST分析は非常に重要となります。

PEST分析については以下の記事で詳細に解説しています。

PEST分析とは|やり方や目的、環境分析のフレームワークをわかりやすく解説

バリューチェーン

バリューチェーンとは「価値連鎖」を意味します。

事業を「主活動」と「支援活動」に分類して、どのような工程で付加価値を生み出すかを分析可能です。

内部環境を詳細に分類・検証できるため、自社の強みや改善点を洗い出して、事業戦略のブラッシュアップができます。

AIDMA(アイドマ)

AIDMA(アイドマ)とは、顧客の購買プロセスを分類したフレームワークです。

1.認知
2.
興味
3.
欲求
4.記憶
5.購買

AIDMA(アイドマ)の活用によって、具体的なペルソナを設定でき、購買プロセスごとに明確なアプローチが取れるようになります。

その結果、効率的なマーケティング戦略の立案に役立ちます。

PDCA

PDCAとは、物事の流れを以下のような時系列や工程別に分類して、継続的に改善を行っていく手法です。

1.Plan(計画)
2.Do(実行)
3.Check(評価)
4.Action(改善)

「4.Action(改善)」を終えたら再び「1.Plan(計画)」に戻り、このプロセスを何度も回していきます。

これを「PDCAサイクル」と呼び、事業の改善や目標の明確化、思考や事象の整理が可能となります。

PDCAについては以下の記事で詳細に解説しているため、ぜひご覧ください。

「PDCA」を高速で回すことで、事業をブラッシュアップ!

まとめ

今回はMECEについて以下のような内容を解説しました。

・MECEの概要
・ロジカルシンキングとの関係性
・MECEのアプローチ手法
・MECEの切り口
・MECEの具体例
・MECEの注意点
・MECEの実践で活用できるフレームワーク

MECEはロジカルシンキングの基礎的概念であり、問題を正しく整理して効率的かつ最良の判断を下すためには必須といえます。

MECEの概念を押さえてビジネスに取り組めば、的確に問題解決ができるだけでなく、説明やプレゼンの場でも説得力を持たせられます。

また、MECEの概念を取り入れる際も、複数のアプローチ手法や切り口があるため、ぜひ確認してみてください。

そして最後には、MECEの実践で活用できるフレームワークも紹介しています。

MECEを踏まえてこれらのフレームワークを活用できれば、円滑かつ効率的な事業運営につながるため、ぜひ取り入れてみてはいかがでしょうか。

この記事の執筆者

久田敦史

久田敦史

株式会社ナレッジソサエティ 代表取締役

バーチャルオフィス・シェアオフィスを通して1人でも多くの方が起業・独立という夢を実現し、成功させるためのさまざまな支援をしていきたいと考えています。企業を経営していくことはつらい面もありますが、その先にある充実感は自分自身が経営をしていて実感します。その充実感を1人でも多くの方に味わっていただきたいと考えています。

2013年にジョインしたナレッジソサエティでは3年で通期の黒字化を達成。社内制度では週休4日制の正社員制度を導入するなどの常識にとらわれない経営を目指しています。一児のパパ。趣味は100キロウォーキングと下町の酒場めぐり。

【学歴】
筑波大学中退
ゴールデンゲート大学大学院卒業(Master of Accountancy)

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