本記事では、PDCAサイクルについて以下の内容を解説しています。
- 概要・4つのプロセス
- メリット・デメリット
- 効率的に回すコツ
- 失敗の原因
- 古い・時代遅れと言われる理由
- 活用例
PDCAサイクルを有効活用すると、継続的に事業の改善ができ、目標や行動の明確化も可能です。
しかし、サイクルを回すのに時間がかかり、新しいアイデアが生まれにくいといったデメリットもあります。
また、やり方を間違うと事業改善の効果が薄れるため要注意です。
この記事でPDCAサイクルの特徴やコツを理解して、事業の効率化を図ってみてはいかがでしょうか。
目次
PDCAサイクルとは?
PDCAサイクルとは、以下の4つの工程を繰り返して事業を継続的に改善させる手法です。
- 1.Plan(計画)
- 2.Do(実行)
- 3.Check(評価)
- 4.Action(改善)
各工程の頭文字を取って「PDCA」と呼びます。
「Action」を終えたら「Plan」に戻って繰り返し4つの工程を回します。
PDCAサイクルの活用によって、目的の明確化や達成度の振り返り、問題の早期発見などが可能です。
PDCAサイクルは、1950年代に統計学者「ウィリアム・エドワーズ・デミング」によって広められました。
その根底には、師匠であった「ウォルター・シューハート」が提唱した「シューハート・サイクル」があるといわれています。
現在は、品質管理の国際基準である「ISO 9001」と「ISO 14001」でも取り入れられており、日本でも深く浸透しています。
PDCAサイクルの各工程については、詳しく後述しています。
PDCAサイクルの各プロセス
PDCAサイクルでは、以下の4つの工程を回します。
- 1.Plan(計画)
- 2.Do(実行)
- 3.Check(評価)
- 4.Action(改善)
ここでは、各工程を詳しく解説します。
Plan(計画)
PDCAサイクルの最初の工程である「Plan(計画)」では、以下の作業を行います。
- 現状分析
- 目標設定
- 目標達成に向けた行動・スケジュールの設定
PDCAサイクルにおいて、Planは事業運営の指針となります。
明確な計画を立てられれば、事業の効率化や企業全体の意思の統一が可能です。
目標は明確な数字で設定し、達成可能で現実的なプランを立てることが重要です。
Planでは「マトリックス図」や「SWOT分析」「ガントチャート」といったフレームワークを効果的に活用しましょう。
Do(実行)
PDCAサイクルの「Do(実行)」とは「Plan」で作成した計画を実行する工程です。
この際に重要なポイントは以下の2つです。
- 計画に沿った内容を実行する
- 実行内容を記録する
計画とは異なる行動を取ると、PDCAサイクルに一貫性がなくなり、効果が薄れます。
また、次の工程「Check(評価)」を円滑に行うためにも、実行内容は都度記録しましょう。
具体的な数字で記録を行うことで、より効果的に評価が可能となります。
Check(評価)
PDCAサイクルの「Check(評価)」とは「Do」で実行した内容を検証・評価する工程です。
具体的には、以下の内容を実施します。
- 計画通りに実行できたかを検証
- 実行に対する成果を分析
- 計画と実行内容を踏まえ、問題点の特定
計画の成否の判断だけでは、事業の改善が難しいです。
必ず「成功した要因は何か」や「なぜ失敗したのか」を踏まえて分析しましょう。
客観的なデータに基づき、定量的な情報を使うことが大切です。
また、分析は個人ではなくチームで行うと、より充実したデータが揃いやすくなります。
定期的にCheckを行い、問題を早期発見できれば、安定した事業運営につながるでしょう。
Action(改善)
PDCAサイクルの「Action(改善)」とは「Check(評価)」の分析結果を基に、今後の改善策を練る工程です。
Checkで分析した問題点に対応する解決策を策定します。
場合によっては計画の中止や大掛かりな方向転換を要する場合もあります。
改善策が複数ある場合は、より重要なものから優先順位を付けて取り組みましょう。
また、課題の改善はもちろん、良かった点をブラッシュアップする作業も重要です。
改善策を立てたら、再度「Plan(計画)」に戻り、PDCAサイクルを繰り返します。
PDCAサイクルを回すメリット4選
PDCAサイクルの実施には、事業の生産性の向上につながる複数のメリットがあります。
- 継続的に事業を改善できる
- 目標や目的、具体的な行動を明確化できる
- 問題点を早期発見できる
- 失敗から学ぶ機会を得られる
ここでは、各メリットを詳しく解説します。
継続的に事業を改善できる
PDCAサイクルの活用によって、継続的に事業を改善できます。
各工程を適切に行えば、着実に事業の質はブラッシュアップされます。
顧客の満足度や収益性の向上につながるでしょう。
また、PDCAサイクルでは頻繁に評価・改善を行うため、従業員全体の意識が事業の成長に向きやすくなります。
その結果、モチベーションアップや意思の統一が可能となります。
目標や目的、具体的な行動を明確化できる
PDCAサイクルの実施によって、目標や目的、具体的な行動を明確化できます。
「Plan」の工程で最終的な目標や行動計画を決めれば、これからやるべきことの明確化が可能です。
目標が曖昧な状態で行動しても無駄が多くなり、行動計画がなければ、本来の目的とズレる危険性が生じます。
そこでPDCAサイクルを取り入れれば、無駄なくブレずに事業の成長に向けて行動できます。
また、チームが同じ意識で行動できるので、全体の温度感を合わせて事業運営を進められる点もポイントです。
問題点を早期発見できる
PDCAサイクルは繰り返し回すことが前提の手法です。
定期的に「Check(評価)」を行うことで問題点を早期発見できます。
効果的な計画や施策は、外部環境によっても変わります。
計画時には最善の施策でも、時間が経つと問題につながるケースもあるのです。
PDCAサイクルを活用して問題点を早期発見できれば、大きな損失となる前に軌道修正が可能となります。
結果として長期的な事業の存続につながるでしょう。
失敗から学ぶ機会を得られる
PDCAサイクルでは「Check(評価)」の内容を基に「Action(改善)」で改善を行います。
PDCAサイクルを回すたびに、失敗から学び、事業の改善につなげる機会を得られるのです。
事業の失敗パターンを把握すれば、経験に基づいた計画を立てやすくなります。
また、失敗のパターンは他の業界・職種でも共通していることが多いです。
事業の拡大や多角化の際にも、蓄積した失敗パターンを活かせるでしょう。
一方で、事業を評価・改善する工程を行わないと、失敗のパターンや改善の流れなどを把握できないため要注意です。
PDCAサイクルのデメリット3選
複数のメリットがあるPDCAサイクルですが、いくつかのデメリットもあります。
- サイクルを回すのに時間がかかる
- 新しいアイデアが生まれにくい
- 人的コストを要する
これらのデメリットといかに付き合うかも、PDCAサイクルの成功において重要です。
サイクルを回すのに時間がかかる
PDCAはサイクルを回すのに時間がかかります。
サイクルを1度回すのに「Plan・Do・Check・Action」の4つの工程が必要なためです。
また、サイクルを繰り返すことが前提のため、1度回せば終わるわけでもありません。
近年は外部環境が目まぐるしく変化しているため、業界によってはPDCAサイクルの特徴が障壁になる可能性があります。
実行の前に以下の点を確認しましょう。
- 高速で回すために何をすべきか
- PDCAサイクルとマッチした事業内容か
新しいアイデアが生まれにくい
PDCAサイクルは前例を基に事業を改善していくため、新たなアイデアが生まれにくいです。
現在は環境の変化が激しいため、既存のアイデアのみでは競争に勝てない可能性があります。
新たなアイデアを生むには、以下のような取り組みが重要です。
- 幅広い視点から意見をもらう
- PDCA以外の手法・戦略を取り入れる
具体的な手法としては「OODAループ」などが挙げられます。
OODAループについては詳しく後述します。
人的コストを要する
当然ですが、PDCAサイクルを回すには、人的コストが発生します。
各工程を適切に行うと、一定の時間や手間がかかります。
また、多様な視点から検討することが大切なので、会議や打ち合わせが増える可能性もあるでしょう。
結果として本来の業務の妨げになるリスクや、新たな人材の雇用が必要になる可能性が生じます。
人的コストを最小限に抑えるためにも、以下のような意識が重要です。
- いかに高速にPDCAを回すか
- いかに同じ労力・時間で大きな効果を得るか
PDCAサイクルが業務の妨げになって形骸化しては本末転倒なので要注意です。
PDCAを効率的に回す4つのコツ
PDCAサイクルを効率的に回すためにも、以下の4つのコツを押さえましょう。
- 具体的な数字を用いる
- 無理のない計画を立てる
- 計画通りに実行
- 定期的に評価を行う
それぞれの要因を詳しく解説します。
具体的な数字を用いる
PDCAサイクルの各工程では、明確な数字を用いましょう。
目標設定で数字を使えば、具体的に「どの程度できたら成功なのか」が判断できます。
また、定量化できる評価でないと、担当者の主観が入る可能性が高まります。
主観が入ると、Action(改善)の段階で適切な施策を講じられない原因となるので要注意です。
また、定量化できる情報がないと、会議や打ち合わせの際も参考になる意見が出にくくなります。
当然個人の意見として主観を伝えることは大切ですが、事実と意見は区別して取り扱いましょう。
無理のない計画を立てる
無理のない計画を立てることも、PDCAサイクルの実施において重要です。
Plan(計画)の段階で高すぎる目標や行動計画を立てると、実現性が下がります。
結果として、事業運営が雑になったり、モチベーションが低下する原因になるので要注意です。
最初は十分に達成が見込める目標を設定し、分析結果を基に調整していきましょう。
また、属人性の高い計画にも注意が必要です。
属人性が高いと、人事異動や不慮の事態の際に対応できなくなります。
マニュアルや仕組みを作って、誰でも実行できる計画を意識しましょう。
計画通りに実行
計画通りに実行することも非常に重要です。
Plan(計画)で定めた通りに実行しなければ、計画が良かったかどうか検証できないためです。
また、Check(評価)で適切に検証できるように、定量的な活動記録を残すことも意識してください。
時と場合に合わせて柔軟に行動することは大切ですが、PDCAサイクルの効果が薄まる点に注意しましょう。
定期的に評価を行う
PDCAサイクルを回す際は定期的に評価を行いましょう。
通常業務を進めながらPDCAサイクルに取り組むと、後回しになってしまう可能性があります。
ただ、PDCAサイクルは高速で繰り返し回すことが重要です。
評価が遅れると、万が一計画に不備があった時の対応が遅れます。
また、外部環境の変化によって適切に評価できなくなる可能性もあるので要注意です。
PDCAの評価を行うタイミングをあらかじめ決めておくといった対策を取り入れましょう。
PDCAサイクルが失敗する4つの原因
思うようにPDCAサイクルの効果を得られないこともあります。
特に以下の原因で失敗するケースが多いです。
- 継続しない
- 形骸化している
- 計画を実行できない
- 客観的な評価ができない
ここでは、各要因を詳しく解説します。
継続しない
PDCAサイクルは中・長期的に継続することが前提の手法です。
1度サイクルを回してただけで、完全に事業を最適化できるわけではありません。
1回のサイクルで分からない、もしくは最適化できない問題点も、繰り返すことで徐々に改善されていきます。
また、その瞬間で最適な行動指針であっても、外部環境の変化によって問題が生じる可能性があります。
加えて、サイクルを継続しないと従業員のモチベーション低下や目的意識の希薄化につながることもあるでしょう。
PDCAサイクルは、事業を中・長期的に成長させていく手法と理解したうえで、何度も回すことを意識してください。
形骸化している
PDCAサイクルを回すことが目的となり、形骸化してしまうことも失敗の原因となります。
目的を見失った状態でPDCAサイクルを回しても、効果的な計画や分析結果、改善案にはつながりません。
無駄に時間や労力を費やしている状態になるので「やらない方がマシ」といった事態に陥る可能性もあるでしょう。
PDCAサイクルを回す際は、必ず目的意識を全員で共有することが大切です。
計画を実行できない
計画通りに実行できない場合、PDCAサイクルの効果が薄れます。
上述した通り、計画通りに実行できなければ、計画自体の検証ができなくなるためです。
事業運営の中で急に方針を変える、もしくは達成できない計画を立ててはいけません。
PDCAサイクルの効果を最大化したい場合は、現実的な計画を立てて、計画通りに実行しましょう。
客観的な評価ができない
PDCAサイクルのCheck(評価)で、定量的な評価ができていない場合も、効果は薄れます。
主観だけで実行内容を評価すると、担当者によって意見が分かれます。
その結果、計画や実行内容が成功か否かを判断しづらくなるので要注意です。
また、定量的な情報がないと全体での意思疎通が難しく、効果的な改善策や計画を立てられなくなります。
主観も計画や改善策の参考になりますが、客観的な情報とは別に取り扱いましょう。
PDCAは意味ない?古い・時代遅れといわれる理由とは
中には「PDCAは時代遅れ・意味がない」と考える方もいます。
その背景には、ビジネス環境の変化があると考えられます。
現在は外部環境の変化が激しく、スピード感を持った事業運営が求められるケースも多いです。
また、環境の変化に合わせて事業にも新しいアイデアを取り入れる必要性が出てきています。
その点、PDCAサイクルはスピード感という観点では優れておらず、新しいアイデアも創出しにくいです。
そのため、以下のような事業においては不向きの可能性があります。
- 素早い事業展開が必要な事業
- 新規のアイデアを次々と取り入れる必要がある事業
もちろん、未だPDCAサイクルが効果的な事業内容も数多く存在します。
事業内容とPDCAサイクルの特徴を踏まえて、取り入れるか否かを判断しましょう。
PDCAサイクルの活用例
PDCAサイクルは多くの有名企業でも取り入れられています。
ここでは、PDCAサイクルの活用例を2つ紹介します。
- 無印良品の例
- トヨタ自動車の例
無印良品の例
無印良品の現在の経営を支える仕組みを作ったのはPDCAサイクルといわれています。
無印良品では、業務マニュアル「MUJI GRAM」が作成されており、店舗運営の標準化が図られています。
MUJI GRAMはPDCAサイクルに基づいて作成されていて、その時の環境に対応するため日々変わり続けているのです。
MUJI GRAMは、PDCAによって毎月20ページほど改訂されているといわれています。
トヨタ自動車の例
トヨタ自動車でもPDCAサイクルが活用されています。
トヨタの「ムリ・ムダ・ムラ」の3Mを排除した「トヨタ生産方式」は、PDCAサイクルを活用しながら生産性の向上を実現しています。
また、現場主導でスピード感を持ってサイクルが回っている点も特徴です。
不良品を検知したら瞬時に稼働を停止し、問題の解明や検証を行います。
そして、管理者や従業員、技術者などの組織全体で改善案を出すことで効率よく事業の最適化を図っています。
PDCAに代わるもの「OODAループ」とは?
上述した通り、PDCAサイクルは「時代遅れ」「古い」という意見を持つ方がいます。
特に、新たなアイデアの創出が求められる事業や、スピード感が重要な事業においてはPDCAサイクルが適さない可能性があります。
そこで、PDCAサイクルの代わりとして有力な手法が「OODAループ」です。
OODAループとは、以下の4つの要素から短期的な視点で事業改善を行う手法です。
- Observe(観察):情報収集・現状把握を行う工程
- Orient(現状判断):観察した情報を基に現状分析を行う工程
- Decide(決定):現況判断に基づいて最も効果的な行動を決める工程
- Act(行動):決定した行動を実行する工程
PDCAサイクルとは異なり瞬時の行動を重視するため、スピード感を持って事業を展開できます。
また、柔軟性や主体性も比較的高いので、PDCAサイクルよりも新しいアイデアを創出しやすい点もポイントです。
まとめ
今回はPDCAサイクルの概要やメリット・デメリット、実行時のポイントなどを解説しました。
PDCAサイクルは継続して事業を改善するための手法で、日本においても深く浸透しています。
適切にPDCAサイクルを回せれば目標や行動指針が明確になり、問題点も迅速に把握できるでしょう。
しかし、いくつかの注意点や実行時のポイントもあり、確認しないと失敗の原因になり得ます。
本記事の内容を把握して、適切にPDCAサイクルを回し、効率的に事業を改善していきましょう。
この記事の執筆者
久田敦史
株式会社ナレッジソサエティ 代表取締役
バーチャルオフィス・シェアオフィスを通して1人でも多くの方が起業・独立という夢を実現し、成功させるためのさまざまな支援をしていきたいと考えています。企業を経営していくことはつらい面もありますが、その先にある充実感は自分自身が経営をしていて実感します。その充実感を1人でも多くの方に味わっていただきたいと考えています。
2013年にジョインしたナレッジソサエティでは3年で通期の黒字化を達成。社内制度では週休4日制の正社員制度を導入するなどの常識にとらわれない経営を目指しています。一児のパパ。趣味は100キロウォーキングと下町の酒場めぐり。
【学歴】
筑波大学中退
ゴールデンゲート大学大学院卒業(Master of Accountancy)
【メディア掲載・セミナー登壇事例】
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