本記事では、サービスオフィスについて以下の内容を解説しています。
- 概要
- メリット
- デメリット・注意点
- 向いている人・企業
- 他のフレキシブルオフィスとの違い
事業形態が多様化している昨今において、費用を抑えてすぐにビジネスを始められるサービスオフィスは、有力なオフィス形態の1つです。
他のオフィス形態と比較した複数のメリットがあり、有効活用できれば事業が有利に進む要因となるでしょう。
しかし、サービスオフィスならではの注意点もあります。
特徴やメリット・デメリットを確認して「自分はサービスオフィスが向いているか」を判断しましょう。
記事後半では、各種フレキシブルオフィスとの違いも紹介しているため、ぜひご覧ください。
目次
サービスオフィスとは?
サービスオフィスとは、事業で活用できる執務空間をレンタルできるオフィス形態です。
サービスオフィス業者が賃貸している空間を複数の個室に区切り、各個室を利用者にレンタルする仕組みとなっています。
また、事業で必要な設備や備品が最初から整っている点も特徴です。
- 通信環境
- オフィス家具
- プリンター
- シュレッダー など
さらに以下のようなサービスを提供している業者も多いです。
- 電話代行サービス
- 秘書代行サービス
- ラウンジ
- 人材交流
- 事業サポート
- 貸会議室の提供
利用者は月額料金やオプション料を支払うことで、これらのサービスを利用できます。
賃貸オフィスとの違い
従来の賃貸オフィスの場合、不動産オーナーと不動産賃貸契約を結び、自身で備品等を用意します。
もちろん事業支援などの各種サービスも提供されません。
一方でサービスオフィスは、不動産を賃貸している事業者とサービス利用契約や施設利用契約を締結します。
不動産賃貸契約は2年の契約期間が一般的ですが、サービスオフィスは1ヶ月などの短期間の契約も可能です。
サービスオフィスが注目される背景
サービスオフィスを含むフレキシブルオフィスの市場規模は拡大傾向にあり、今後も伸びると予想されています。
その背景には、働き方や事業形態の多様化があると考えられます。
2019年には、働き方改革の推進によりテレワークを導入する企業が増加しました。
テレワークを定着させた企業は、大規模な賃貸オフィスを使う必要がなくなった一方で、安価で利用できるフレキシブルオフィスの需要が向上しました。
また、近年の急激な社会環境の変化や消費者ニーズの多様化によって、事業形態を柔軟に変える必要性も生じています。
その際に、短期間でも契約できるフレキシブルオフィスなら、事業の実態に合ったオフィスを柔軟に利用できるでしょう。
このように、フレキシブルオフィスを有効活用できれば、事業効率が向上しビジネスの成功要因となるはずです。
サービスオフィスに明確な定義はない
実はサービスオフィスに明確な定義はありません。
基本的には後述する「レンタルオフィス」と同じサービス内容です。
あえて「サービスオフィス」と名乗る企業が存在する理由としては、ネーミングによる差別化戦略と考えられます。
また、サービスオフィスと名乗る企業は、施設や各種支援の高級感で差別化しているケースも多い印象です。
他方で広義的な意味では、あらゆるフレキシブルオフィスをまとめてサービスオフィスとしているケースもあります。
レンタルオフィスを含むフレキシブルオフィスについては、詳しく後述しています。
サービスオフィスのメリット
サービスオフィスには、他のオフィス形態と比較した複数のメリットがあります。
- コストを抑えて利用を始められる
- すぐにビジネスを始められる
- 好立地・好アクセスな拠点を得られる
- 生産性が向上する各種サービスを受けられる
- 事業の変化に合わせて柔軟に利用できる
ここでは、各魅力・メリットを詳しく解説します。
コストを抑えて利用を始められる
サービスオフィスは賃貸オフィスよりもコストを抑えて利用を始められます。
賃貸オフィスの契約では、以下のような初期コストを要します。
- 保証金(賃料の6~12ヵ月)
- 内装工事費
- 設備投資
- インフラの整備
一方でサービスオフィスなら、入会金・保証金が安価で、内装工事費や設備投資、インフラの整備も不要です。
初期費用を削減できれば大規模な資金調達が必要なく、利益率の向上や資金繰りの最適化が可能となります。
通信費や水道光熱費が不要な点を踏まえると、総合的なコストも抑えやすいはずです。
すぐにビジネスを始められる
サービスオフィスは契約したら比較的すぐに利用を始められます。
最初から事業で必要な環境が整っているためです。
一方で賃貸オフィスは以下のような手続きが必要なので、すぐに事業を始められるわけではありません。
- 内装工事
- インフラの整備
- オフィス家具の購入・搬入 など
環境の変化が激しい昨今において、迅速に事業を始められる点は大きなアドバンテージとなるでしょう。
好立地・好アクセスな拠点を得られる
サービスオフィスは駅前やビジネス街の一等地など、好立地・好アクセスな施設が多いです。
好立地な賃貸オフィスは多額の初期費用や固定費を要するため、現実的に選べない可能性が高いです。
しかし、サービスオフィスなら初期費用を抑えることができ、プランを吟味すれば固定費も削減できます。
また、サービスオフィスは法人登記ができる点もポイントです。
ビジネス街の一等地や駅前ビルを法人所在地として登記できれば、事業の信頼性が向上します。
成約率の向上や取引の長期化に繋がる要因となるでしょう。
生産性が向上する各種サービスを受けられる
生産性が向上する各種支援を受けられる点もサービスオフィスの魅力です。
施設にもよりますが、以下のような事業支援が提供されています。
- 電話代行サービス
- 秘書代行サービス
- ラウンジ
- 人材交流
- 事業サポート
- 貸会議室の提供
電話代行や秘書代行など、通常なら担当者の配置が必要な業務のサポートも受けられます。
より事業に集中できるだけでなく、人件費も抑えられるでしょう。
事業の変化に合わせて柔軟に利用できる
1ヶ月単位などの短い期間で契約できる点もサービスオフィスの魅力です。
事業の実態が変わったらすぐにオフィス移転ができ、オフィス家具等の運搬作業なども不要です。
一方で賃貸オフィスは基本的に2年契約で、退去時には退去費用や大掛かりな運搬作業などを行う必要があります。
業務の拡大や方向転換の予定がある場合は、常に最適な環境で事業に取り組めるサービスオフィスの活用が有力といえます。
サービスオフィスのデメリット・注意点
一方で、サービスオフィスならではのデメリットや注意点もあります。
- Wi-Fiを共有する必要がある
- 事業の実態によっては費用対効果が薄い場合もある
- 内装を自由に変えられない
ここでは、それぞれを詳しく解説します。
Wi-Fiを共有する必要がある
サービスオフィスの環境は共有Wi-Fiが基本です。
共有Wi-Fiはセキュリティ面が問題になるケースがあります。
また利用者が多い時間帯は混線状態となり、通信速度が低下する可能性もあります。
個別の有線LANなどを用意している施設もあるので、頻繁に通信環境を使う場合は事前に確認しましょう。
事業の実態によっては費用対効果が低い場合もある
坪単価に着目すると、サービスオフィスよりも賃貸オフィスの方が安いです。
事業規模に見合わないサービスオフィスを選んだり、付随サービスや設備を有効活用できないと固定費が増えるリスクが生じます。
また、サービスオフィスは別のフレキシブルオフィスよりも月額費用が高額になりやすいです。
そのため、サービスオフィスを使う場合はオフィスやプランを慎重に吟味する必要があります。
費用を抑えることが最優先の場合は、別のオフィス形態も検討するとよいでしょう。
内装を自由に変えられない
サービスオフィスは基本的に内装を変えることができません。
椅子の持込み程度なら許可される場合もありますが、基本的には最初から備わっている設備をそのまま使う必要があります。
一方で賃貸オフィスなら、原状回復は要するものの自由に内装を変更できます。
そのため、内装や備品などに拘りたい場合は要注意です。
サービスオフィスが向いている人・企業
以下のような人・企業はサービスオフィスの利用が向いている可能性が高いです。
- 初期費用を抑えて事業を始めたい
- 事業形態の変化が予想される
- 好立地にオフィスを構えたい
- テレワークを導入したい
各要素を詳しく解説していきます。
初期費用を抑えて事業を始めたい
初期費用を抑えて事業を始めたい場合は、サービスオフィスが向いている可能性があります。
サービスオフィスの入会金や保証金は、賃貸オフィスの保証金よりも非常に少額であるためです。
また、オフィス家具や備品を揃える必要がない点も、賃貸オフィスより初期費用を抑えられるポイントです。
「借入を少なくして資金繰りで優位性を築きたい」という方にも適した選択肢となります。
事業形態の変化が予想される
今後の事業規模や事業の方向性が変わると予想できる場合も、サービスオフィスの活用が向いています。
サービスオフィスは1ヶ月などの短期間でも契約できるので、事業実態の変化に合わせて最適なオフィス形態を選択できます。
一方で賃貸オフィスだと基本的に2年契約のため、急激な事業の変化に対応しにくいです。
事業規模に合わないオフィスを使うと、生産性の低下や固定費の増加に繋がるため要注意です。
好立地にオフィスを構えたい
駅前やビジネス街の一等地などにオフィスを構えたい方も、サービスオフィスの利用が向いています。
駅前や一等地の賃貸オフィスの契約には、多額の初期費用や固定費が必要です。
一方で、サービスオフィスなら初期費用を抑えられ、プランを吟味すれば固定費の削減も可能です。
拠点が好立地なら利便性が高まるだけでなく、顧客から好印象を持たれる要因ともなるでしょう。
テレワークを導入したい
テレワークを導入したい企業もサービスオフィスの利用を検討しましょう。
テレワークを浸透させれば、従来より小規模なオフィスで事業を運営できます。
テレワーク浸透後の移転先としてサービスオフィスが有力な選択肢となるでしょう。
また従業員視点だと、自宅は仕事を行う設備や作業環境が整っていないケースもあります。
そのような方も、サービスオフィスの活用により円滑にテレワークの導入が可能となるはずです。
他のフレキシブルオフィスとの違いとは
サービスオフィス以外にも、以下のようなフレキシブルオフィスが存在します。
- レンタルオフィス
- シェアオフィス
- コワーキングスペース
- バーチャルオフィス
- インキュベーションオフィス
ここでは、サービスオフィスと各フレキシブルオフィスの違いを解説します。
サービスオフィスとレンタルオフィスの違い
レンタルオフィスとは、専有できる個室をレンタルできるオフィス形態です。
サービスオフィスと同様に、最初からオフィス家具や備品、通信環境が整っています。
上述した通り、サービスオフィスとの明確な定義の違いはありません。
しかし、あえて「サービスオフィス」と謳っている施設は、高級感や設備の品質などを重視している印象があります。
一方で月額料金は、レンタルオフィスの方が低めの傾向にあります。
ただ、サービスの呼び方だけでは正確な判断が難しいので、実際に足を運んで施設の環境を体感したうえで利用を決めることが望ましいです。
レンタルオフィスについては「レンタルオフィスとは?定義・メリットとデメリットの解説」で詳しく紹介しているので、ぜひご覧ください。
サービスオフィスとシェアオフィスの違い
シェアオフィスとは、1つのオフィス空間を複数の事業者が共有するオフィス形態です。
詳細なシステムは施設によって異なり、ブース席や個室が用意されている場合もあります。
また、フリーアドレス制が基本です。
サービスオフィスのように専有できる個室はありませんが、その分価格を抑えて利用できます。
ただし、専有できる個室がないため、営業所を要する特定の業種では起業できない点に要注意です。
サービスオフィスとコワーキングスペースの違い
コワーキングスペースも複数の事業者が1つのオフィス空間を共有する形態です。
上述したシェアオフィスとの明確な違いはありません。
ただ、コワーキングスペースはシェアオフィスよりも利用者同士の交流が活発というイメージもあります。
結局は各施設の雰囲気や環境にもよりますが、契約時の参考にしてください。
コワーキングスペースについては「そもそもコワーキングスペース(Coworking Space)って何?東京のコワーキングスペースを中心に解説」で詳しく解説しています。
サービスオフィスとバーチャルオフィスの違い
バーチャルオフィスとは、事業用の住所をレンタルできるサービスです。
サービスオフィスとは異なり実際の執務空間は提供されませんが、安価に事業用の住所を利用できます。
実際に執務空間を得られるフレキシブルオフィスとは異なり、以下のような方に向いています。
- 自宅を主な執務スペースにする
- プライバシーのリスクを防止したい
- 自宅で法人登記が認められていない
- 第三者からの信頼性を高めたい
ただし、実態のある営業所が必要な一部の業種では利用できないため要注意です。
バーチャルオフィスについては「バーチャルオフィスとは?メリット・デメリット・よくある誤解についての解説」で詳しく解説しています。
サービスオフィスとインキュベーションオフィスの違い
インキュベーションオフィスとは、最低限の設備が比較的低価格で提供されているオフィス形態で、公的機関や金融関連事業者が関与している点が特徴です。
インキュベーションオフィスの「インキュベーション」とは、英語で「孵化器」を意味します。
ビジネスにおいては「ビジネスが大きくなる(孵化する)前のベンチャー企業」の意味合いで使われます。
広義的な意味で捕らえれば、これから事業を成長させたいスタートアップ企業など向けのオフィスです。
まとめ
今回は、サービスオフィスの概要やメリット・デメリット、向いている人の特徴などを解説しました。
事業用の個室をレンタルできるサービスオフィスは、初期費用を抑えて起業したい方や、事業の実態が変わる見込みの方などに適したオフィス形態です。
従来は賃貸オフィスが一般的な選択肢でしたが、現在はサービスオフィスを含むフレキシブルオフィスも有力な選択肢となっています。
各オフィス形態の特徴を踏まえて、自分に合った選択をしてください
主なオフィス形態や特徴などは「起業時のオフィス形態の選択肢5選│費用やメリット・デメリット等を徹底比較」で解説しているので、併せてご覧ください。
この記事の執筆者
久田敦史
株式会社ナレッジソサエティ 代表取締役
バーチャルオフィス・シェアオフィスを通して1人でも多くの方が起業・独立という夢を実現し、成功させるためのさまざまな支援をしていきたいと考えています。企業を経営していくことはつらい面もありますが、その先にある充実感は自分自身が経営をしていて実感します。その充実感を1人でも多くの方に味わっていただきたいと考えています。
2013年にジョインしたナレッジソサエティでは3年で通期の黒字化を達成。社内制度では週休4日制の正社員制度を導入するなどの常識にとらわれない経営を目指しています。一児のパパ。趣味は100キロウォーキングと下町の酒場めぐり。
【学歴】
筑波大学中退
ゴールデンゲート大学大学院卒業(Master of Accountancy)
【メディア掲載・セミナー登壇事例】
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