起業時の口座を開設できる金融機関には複数の種類があり、それぞれ特徴が異なります。そのため、自分に合った銀行口座を選ぶことができれば、コストを抑えたスムーズな事業運営が可能です。
当記事では、起業時の口座開設先としてよく選ばれる金融機関の種類・特徴について、詳しく紹介します。また、銀行口座の選び方や、口座開設時の注意点についても解説しているため、これから起業する方や、起業に適した銀行口座を知りたい方は、ぜひご覧ください。
目次
1.起業時の銀行口座の開設パターンは2通り
起業時に開設する銀行口座の種類は、個人事業主と法人で異なります。個人事業主として起業する場合は、本人名義または開業届に記載した屋号の使用が一般的です。法人として会社を設立する場合は、会社名を使用して事業用の銀行口座を開設する必要があります。
個人事業主が事業を営む際には、すでに使用しているプライベート用の銀行口座の1つを事業用として扱うことが可能です。ただし、プライベート用の銀行口座を事業用口座として扱う場合、該当の銀行口座でプライベートな入出金が発生すると、確定申告の手続きや売上金の管理が複雑化します。そのため、事業経営のための口座と個人用の口座は分けることがおすすめです。
銀行の口座開設窓口は、個人向けと法人向けに受付が分かれています。株式会社や合同会社など、会社名義の銀行口座を開設する場合は、法人向け窓口での手続きが必要です。法人口座開設手続きでは、会社実印や履歴事項全部証明書など、個人の手続きとは異なる提出物が求められます。
2.銀行口座の開設時によく選ばれる金融機関の特徴とは?
銀行口座の開設時によく選ばれる金融機関には、次の4つの種類があります。
- 都市銀行
- 地方銀行
- 信用金庫・信用組合
- ネット銀行
各金融機関の特徴やメリットを把握することで、より自分に合った事業用口座の開設が可能です。ここからは、上記4つの金融機関の特徴を詳しく紹介します。
2-1.都市銀行
都市銀行の特徴は、全国に支店があることです。また、都市銀行は知名度が高いため、有名銀行で事業用口座を開設することで取引先からの信頼性が高まります。
全国に取引先がある場合、都市銀行の銀行口座を持っていると、同行間での振込手数料が安くなるだけでなく、無料となることもあります。
ただし、都市銀行は口座開設時の審査が厳しく、法人口座の開設には2週間ほどかかります。定款や履歴事項全部証明書に加えて、法人が実在していることを示す郵便物や公共料金の請求書などの提出が必要です。また、事業内容や事業計画の明確さも求められます。
2-2.地方銀行
地方銀行の特徴は、地域に根差した営業を行っていることです。地域密着型の金融機関である都市銀行の中には、ネットワークを活かしたビジネスマッチングを行っているところもあります。
地方銀行が所在するエリアでは、店舗数が多く金融サービスが優良です。郊外や地方で事業を展開する場合は、特に親身に話を聞いてもらえます。
地方銀行は地元の中小企業との取引が多く、起業時の口座開設のハードルは都市銀行よりも低いです。ただし、口座開設時には都市銀行と同様の書類提出が求められます。
2-3.信用金庫・信用組合
信用金庫・信用組合の特徴は、地域の人に近い距離感で仕事をしていることです。信用金庫・信用組合の設立目的は、銀行とは異なります。信用金庫・信用組合は、信用金庫法にもとづいて会員から出資された資金により運営される地域金融機関です。
信用金庫・信用組合は営利を目的としておらず、一定の地域に存在する中小企業および個人事業主のための金融機関と言えます。地域で集めた資金を地域の事業に還元することが、信用金庫・信用組合の目的です。
信用金庫・信用組合のメリットとして、利便性や身近さが挙げられます。銀行と比較して地域の人に近い距離感で運営されているため、創業融資や資金調達、補助金や助成金の活用について相談しやすいです。
2-4.ネット銀行
ネット銀行とは実店舗を持たず、インターネット上で取引する銀行です。ネット銀行の場合、口座開設における審査のハードルが低く、店舗に出向くことなく手続きができます。また、実店舗を持つ銀行と比較して振込手数料が安い点がネット銀行の特徴です。
ネット銀行から他行への振込や、口座残高の確認は、パソコンやスマートフォン上で行えます。ネット銀行であれば、実店舗を持つ銀行が営業していない深夜や早朝の時間帯でも入出金作業が可能です。
ただし、ネット銀行の口座からは、税金の支払いや日本政策金融公庫の返済に対応できないなど、取引に限界があります。
3.起業時の銀行口座の選び方
起業時に開設する銀行口座の選び方は、自分の使い方に合った金融機関を選ぶ意外にも、さまざまな方法が存在します。では、具体的にどのような選び方があるのでしょうか。
ここでは、起業時の銀行口座の選び方を2つ紹介します。これから紹介する2つの方法を参考に、ぜひ自社に適した銀行口座を開設してください。
3-1.職場や自宅の近くにある金融機関を選ぶ
起業時に事業用口座を開設する金融機関の選び方の1つに、職場や自宅からの近さで決める方法があります。職場や自宅の近くにある金融機関なら、口座開設時に実店舗に足を運ぶ時や、口座開設後に窓口での取引が発生した時に便利です。
また、職場や自宅の近くに複数の金融機関がある場合は、より多くの地域に支店を持っている金融機関を選ぶと、出張先でもスムーズに手続きできます。
普段の生活圏から離れた場所にある金融機関で事業用口座を作ると、移動時間や余計な手間が発生するため、注意しましょう。
3-2.手数料やATMの営業時間を考慮して選ぶ
起業時に口座を開設する金融機関の2つ目の選び方として、手数料やATMの営業時間を考慮して選ぶ方法が挙げられます。
金融機関ごとの手数料の差は、1回あたり数百円と少額ですが、取引回数が多くなるにつれてコストが増えるため、注意が必要です。他行への振込手数料やATM利用手数料を比較し、できるだけ安く利用できる金融機関を選ぶことで、事業への負担が軽くなります。
ATM利用手数料が無料になる時間帯は金融機関によって異なるため、深夜や早朝でもATMが無料で使える金融機関を選ぶことがおすすめです。ATMの営業時間が長い金融機関で事業用口座を開設すれば、入出金手続きがしやすくなります。
4.法人口座開設時の注意点
法人口座開設時の注意点として、次の3つが挙げられます。
- 代表者自身が口座を開設する
- 事業内容を説明できるようにしておく
- 複数の銀行口座を開設する
1つ目の注意点は、法人の代表者自身が口座を開設することです。実店舗がある銀行で法人口座を開設する場合、代表者自身が窓口に足を運んで直接手続きを行う必要があります。
やむを得ない事情で代表者自身が手続きできない場合、委任状が必要です。共同経営者や経理担当者が代表者の代わりに法人口座を開設する際は、委任状を持参しましょう。
実店舗がある銀行の窓口に出向く時には、ビジネススーツやジャケットなどフォーマルな服装が好まれます。ラフな格好では銀行の職員に常識を疑われ、口座開設時の審査で不利になるリスクがあるため要注意です。
口座開設の申し込み時には、必要書類や本人確認書類を忘れずに持参しましょう。
2つ目の注意点は、事業内容を説明できるようにしておくことです。銀行で事業用口座を開設する際、窓口の担当者から事業内容の説明を求められることも少なくありません。事業計画書を作成し、事業内容を簡潔に説明できるように準備しましょう。
一般的な認知度が低い専門的な業界で起業する場合や、自身の経歴と異なる事業を始める場合は、説得力のある説明が必要です。事業を始めるに至った経緯や経営理念、事業目的について、分かりやすい説明が求められます。
3つ目の注意点は、複数の銀行口座を開設することです。どこで口座開設をするかによって、審査期間が異なります。ネット銀行では最短で翌日に開設できる場合がある一方、実店舗を持つ銀行は審査完了までに1週間以上が必要です。複数の銀行口座を開設すれば、最短期間で法人口座を持つことができます。
また、複数の銀行口座を開設することで、取引先に合わせて銀行口座を使い分け、振込手数料を安くすることも可能です。
まとめ
今回は、起業時の銀行口座開設について、金融機関の種類や特徴、選び方を解説しました。
事業用口座は、個人事業主と法人で異なります。事業用口座をどこで開設するかによって、審査のハードルや金銭的なコスト、利便性が異なるため、起業時に銀行口座を開設する際は、事前に金融機関の種類や特徴について把握しておくことが重要です。
今回の記事を参考に、金融機関ごとの特徴を把握し、自社に合った銀行口座を開設しましょう。
この記事の執筆者
久田敦史
株式会社ナレッジソサエティ 代表取締役
バーチャルオフィス・シェアオフィスを通して1人でも多くの方が起業・独立という夢を実現し、成功させるためのさまざまな支援をしていきたいと考えています。企業を経営していくことはつらい面もありますが、その先にある充実感は自分自身が経営をしていて実感します。その充実感を1人でも多くの方に味わっていただきたいと考えています。
2013年にジョインしたナレッジソサエティでは3年で通期の黒字化を達成。社内制度では週休4日制の正社員制度を導入するなどの常識にとらわれない経営を目指しています。一児のパパ。趣味は100キロウォーキングと下町の酒場めぐり。
【学歴】
筑波大学中退
ゴールデンゲート大学大学院卒業(Master of Accountancy)
【メディア掲載・セミナー登壇事例】
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