事業成長と合わせてオフィスに求める要素は変化する
例えば、私達は会社の経営状態や方針について話をしている時に「事業の拡大」という表現を頻繁に用いますが、この「事業の拡大」というのは、概ね「売上拡大」を意味することが多く、同じくらいの割合として売上拡大のために「社員増員」をするという意味の事業拡大となる傾向もあります。
厳密にそれぞれに線引きをする必要はありませんが、事業フェーズに合わせたオフィスの形を十分に検討する場合には、どちらを意識しているかによって、取るべき選択肢が変わってくる場合があることは重要です。
なぜならば、売上拡大により意識が向いている場合には、人員増加を必要としてない組織、あるいは人員増加が喫緊の課題ではないことが多いのですが、人員増加を意識した事業拡大の場合には、社員の増減に伴うオフィスの課題が同時に発生する可能性が高くなるからです。
そしてそのような課題は、以前に投稿をしたオフィス移転の問題に直結することになるわけです。
少数精鋭の組織とマッチするオフィス
ここで述べる「少数精鋭」という表現ですが、実はとても広義な意味をもち、また多くの含みをもった言葉でもあります。
例えば士業は少数精鋭という言葉の対象になる場合もありますが、個々人の資格や専門知識を担保にして仕事をするようなケースでは、資格業であるが故に対応できる仕事が資格保有者の人数によって制限されてしまうケースがあります。
これは一度作ったシステムやWEBの仕組みによって作り終わった後の売り上げは営業戦略やマーケティング戦略次第で飛躍的に売上を倍増していくことが可能な場合とは異なり、時間の制約が売り上げにキャップを設けるということです。
また先にあげたようなシステムを作り、売上をあげていくような会社も「少数精鋭」というカテゴリーに属することがある点はご理解頂けるでしょうか?
いずれのようなケースにおいても、1人当たりの生産性を最大に高め、快適に業務を行うことのできる空間があれば売上上限に達することは理論上可能になります。
士業以外にも、例えばコンサルタントであったり、あるいはそもそも人員拡大をしたくないと考えている経営者の場合にも同様です。
これらの場合、あとは「自社オフィスを持つことに対する価値観とそれに見合う出費をどう考えるか」と「クライアント先への常駐や訪問の頻度がどの程度あるか」などによってシェアオフィスのような形がベストか、小規模スペースの賃貸オフィスが良いかが分かれてきます。
また有資格者しか参入できない領域でもあるため、独立か雇用されるかも含め、贅沢を言わなければ「食いっぱぐれることは少ない」とも言えるため、あとはそのようなケースであっても、どれだけ固定費を低くしておけるか?という視点は常に持ち続ける必要があるのが少数精鋭の組織です。
人員増加が常に課題となる組織とマッチするオフィス
一方で、人員増加を常に目指しているような会社の場合、人材募集から実際に採用するまでのタイムラグや、人材採用ができるかどうかなどの諸問題、そして人員が増加するに伴って発生する社内的な変化や事業へのインパクトなど、多くの予見が難しい状況を迎えることになります。
目指す業績がありきでの人材採用であっても、案件ありきでの人材採用であっても、人の増減によって売上が上下してしまうような場合には、全体としての会社の方向性は「常時採用」に近く、あとはその都度利用をするオフィスは、中長期計画上における一点のタイミングに焦点を合わせて、現状の人数に必要なスペースよりも過剰な広さでオフィスを抑える必要が出てきます。
当然、採用がうまくいかない場合には過剰な固定費となっていき、利益を圧迫し、縮小のための移転なども発生するような悪循環のリスクもあるため、経営者はこのポイントに神経質にもなります。
他方、人員増加に合わせたオフィスの確保というのは、既にある程度の人数規模に会社が成長していることを意味しており、実際にはその状態にたどり着く前に、低迷してしまう会社や起業家が大多数を占めている点には留意が必要です。
選択肢を手に入れる前に淘汰されないために
これまで述べた2つの形は、どちらも全体の割合の中では非常に少数派になります。
これは、士業であったり、少数精鋭で事業を長年維持していける人々はやはり少数ですし、また人数をどんどん拡大するフェーズに事業成長をしていける会社もまた少数に属することを意味します。つまり、そのような規模や状態にあわせたオフィス選びに頭を悩ませる選択肢にすらも到達できない起業家が大多数と言うことになります。
この最たる理由というのは、もちろん売上を思い通りに大きくすることが出来ないかったり、オフィスを含めた固定費を身の丈に合わない規模に拡大してしまったり、と理由は色々とありますし、一概に共通した何かを見つけ出すことも容易ではないかもしれません。
しかしながら、例えば売上を伸ばすといった自助努力だけではどうにもならない話を除き、苦しい事業の立ち上げから起動に乗るまでの間、「いかに支出を抑えるか」というポイントは、自社が確実にコントロールを取れる領域とも言えます。
そのように考えると、1人の時から少人数に至るまでの段階を柔軟にその料金体系も合わせて柔軟に変更することが出来るシェアオフィスの利用というのは、単純な「オフィス機能」のみを考える以上に活用メリットがあるという事実は、改めて認識をする必要があります。
事業の拡大と合わせてそのタイミング毎に発生する「勝負の時」は必ずあると思いますが、その「勝負の時」に発生するリスクは、当然のように規模が大きくなればなるほど比例して大きくなります。
これが意味することは、本当の飛躍の時となる、事業規模が大きくなった時の「勝負」のために、まだまだ規模が小さい時には、無駄な出費を極力抑え、次の勝負のタイミングのために力を蓄える方針を取った方がより成功の確率もあがっていくことでしょう。
この記事の執筆者
久田敦史
株式会社ナレッジソサエティ 代表取締役
バーチャルオフィス・シェアオフィスを通して1人でも多くの方が起業・独立という夢を実現し、成功させるためのさまざまな支援をしていきたいと考えています。企業を経営していくことはつらい面もありますが、その先にある充実感は自分自身が経営をしていて実感します。その充実感を1人でも多くの方に味わっていただきたいと考えています。
2013年にジョインしたナレッジソサエティでは3年で通期の黒字化を達成。社内制度では週休4日制の正社員制度を導入するなどの常識にとらわれない経営を目指しています。一児のパパ。趣味は100キロウォーキングと下町の酒場めぐり。
【学歴】
筑波大学中退
ゴールデンゲート大学大学院卒業(Master of Accountancy)
【メディア掲載・セミナー登壇事例】
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