バーチャルオフィスのビル名が変わるリスク
[投稿日]2016/06/01 / [最終更新日]2024/02/23
建物の名前が変わる
以前に渋谷区においてバーチャルオフィスの運営に携わっていたことがあります。
大通りに面する雑居ビルでスペースなどは小さいのですが、住所そのものの見栄えとしては決して悪いものではなく、会議室のスペースが一つしかなかったり、狭かったりと問題はあったものの利用者を集めることそのものはそこまで苦労をせずに利用者を順調に増やすことに成功していました。
利用者からの会議室の完全個室化などの依頼も多数もらうものの、スペース的な拡張についてはそもそも現実的ではなく、同時に運営側としてのコスト負担も決して軽いものではなかったため、要望をもらうものの実現することについては真剣に考えたことがありませんでした。
そんな矢先にまったく予想もしていなったことが発生するのです。
もとから雑居ビルで、その設備の管理などもどこまで行き届いているかもよくわからない感じのビルでしたが、ビルオーナーの諸事情により、金融機関が担保としてビルの所有権を獲得することとなり、また同時に渋谷の再開発のタイミングで大手ディベロッパーに所有権が移り、立ち退きが必要になる、といった非常にややこしい事案に巻き込まれてしまった苦い経験があります。
バーチャルオフィスを選ぶ際には、様々な判断ポイントがありますが、意外に気が付かないのがこのビル名の変更、またビル所有者の変更の可能性です。
ビル名変更による追加コスト
もし利用者側として上記のような状況に巻き込まれた場合、そもそもバーチャルオフィスの利用継続が可能になるのかどうか?という問題が発生します。
そして仮に利用が継続される場合でもオーバーチェンジに伴って建物の名前が変更になったり、改築になったりすることが多々あります。
ビル名が変更になると、名刺・会社案内・ホームページ等の公開情報についても変更する必要が出てきますし、登記の変更も行う必要が出てきてしまいますが、このような変更についても全て自己負担にて行うことになってしまうのが現状です。
登記の変更だけでも3万円かかりますし、その他の情報変更にもコストがかかります。
自分が意図したことではない変更で費用負担をさせられるのはなかなか納得しづらいところですが、バーチャルオフィスの運営者からコスト負担をしてもらえるという可能性はとても低いと考えたほうがよいでしょう。
できるだけそういう可能性を回避するために、いろいろな対策を打たないといけません。
また昔ながらの雑居ビルで退去入居が非常に多いような場合には、建物としての資産価値とは別に収支の採算がしっかりとあっているビルなのかどうか?は内情が分からない限りは知りえないのですが、あまり上手く不動産管理ができていない場合もあり、もしもバーチャルオフィスを選択する際に他の選択肢があるようであれば、あえて積極的に利用することは避けた方が良い判断材料の一つと考えてもよいかもしれません。
登記の仕方を考える
それでも諸事情によりそのようなビルでのバーチャルオフィスを利用する場合には、登記をする際に多少工夫をすることをお勧めします。
まず考えられる手法としては、ビル名を登記簿に記載しないというものです。
必ずしもビル名を登記簿に記載する必要はなく、番地まででとどめた形で登記をすることが可能ですが、これにはデメリットもありまして、登記簿の住所で送られてくる郵便物はビル名やフロアが書いていないことによって届かないということがあり得ます。
特にバーチャルオフィスの場合、郵便局や宅配業者がその住所にいる法人なのかを確実に認識しているわけではないので、ビル名とフロアが記載されていない郵便物については宛所不明となる可能性はあります。これは同じ宛名であっても届いたり届かなかったりといったことが起こりえるということでして、頻繁に発生するような場合には非常にストレスフルです。
事業運営をして行く上では物事一つ一つを確実に処理できるように進めていく方が無駄が少なく無難でしょう。
名前が変わりやすいビルとは?
もうひとつは、ビル名が変わりやすそうなところを選ばないというところです。
これは上記のようなケースにも近いわけですが、なかなか判断が難しいのが実情ではありますが、名前が変わりやすと言える一つの例は、不動産ファンド等によって所有されているビルです。
こういったビルは、投資目的で売買されますので、よい買い手が現れれば簡単に売買が行われるのです。最近よく見かけるのが、買収したビルにファンドの冠をつけた名前を付けるというものです。
こういったビルを登記先にするバーチャルオフィスではビル名の変更に影響を受ける可能性が高くなります。
また雑居ビルのように個人オーナーのようなケースは、財務状況が把握しずらいという点も確かにあるのですが、良くも悪くも個人とのしての収支の採算を合わせるためにテナントに特に統一性もなくいろいろな業種、店舗などが入り混じることになり、住所そのものが混沌としてしまうのが特徴です。
バーチャルオフィスは運営者に住所を借りるというもので、主導権は運営者、さらに言えば物件のオーナーの方が権限が強くなるという傾向があります。
コスト抑えたり、プライバシーを保護しながらビジネスを運営していける点でバーチャルオフィスは、起業家にとってとても有効なサービスですが、無駄なコストを発生させないためにも慎重に見極めることが必要です。
この記事の執筆者
久田敦史
株式会社ナレッジソサエティ 代表取締役
バーチャルオフィス・シェアオフィスを通して1人でも多くの方が起業・独立という夢を実現し、成功させるためのさまざまな支援をしていきたいと考えています。企業を経営していくことはつらい面もありますが、その先にある充実感は自分自身が経営をしていて実感します。その充実感を1人でも多くの方に味わっていただきたいと考えています。
2013年にジョインしたナレッジソサエティでは3年で通期の黒字化を達成。社内制度では週休4日制の正社員制度を導入するなどの常識にとらわれない経営を目指しています。一児のパパ。趣味は100キロウォーキングと下町の酒場めぐり。
【学歴】
筑波大学中退
ゴールデンゲート大学大学院卒業(Master of Accountancy)
【メディア掲載・セミナー登壇事例】
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